七つの海のお正月

 私の青春は海の生活で、正月は航海中か外国の港で迎えていました。

新年が近づくと航路筋の行き合う船は、Merry Christmas、Happy New Yearと

世界共通のモールス符号を使い発光信号で挨拶を交わします。

停泊中の船は世界中どこの港でも元旦の午前零時に

一斉に汽笛を鳴らします。　そして真新しい国旗を掲揚します。

　　復帰前の沖縄、那覇で迎えた正月は、岸壁に沢山の人達が来ました。

　　　　　　　　　　船尾の日の丸の旗を仰ぐ、晴れ着姿の人達、家族連れ、

祖国復帰を願う、沖縄の人達の心情が胸を打ちました。

鉱石しかない殺風景な港、フィリピンのララップでの静かな南国の正月は

昼から着飾った沢山の若い女性が船に遊びにきて賑やかになりました。

　現在フィリピンの女性は多数来日していますが、1960年当時は珍しく

　　　　　　　　　　　　茶褐色のスペイン系の美女に囲まれ興奮？？

　　　　　　　　　日本語と英語チャンポンで、のど自慢大会が開かれたのです。

     南アフリカのケープタウン、南半球は真夏のお正月、

有名なテーブルマウンテンに登山、汗を流しながら

　　　　　　　　暑い甲板でデッキ・ゴルフに熱中した思い出が残っています。

                          テーブルマウンテン１０７６m　喜望峰の名にふさわしい街　ケープタウン

　　　    　　　 冬のドーバー海峡を濃霧に苦しみながら　　

テームズ河に入ったのは年の暮れでした。

ロンドン市民は、ピカデリー・サーカスとトラファルガー広場に集まり、

大晦日の夜は賑やかだと聞いて、地下鉄と２階建てのバスで行ってみました。

イギリスは緯度０度グリニッチ天文台の世界標準時、午前零時は日本時間の

午前９時です。ウェストミンスターのビック・ベンのチャイムが鳴ると、

広場を埋めた大群衆から（蛍の光）の大合唱が起こりました。

行く年を送り、新しい年を迎えるニューイヤーイブに興奮しました。

　　　　　　　　　　　　エロスの像で知られるピカデリーサーカス（ロンドン）１９６０年

　　　　　私の好きなニューヨークは雪景色　１９６３年の元旦を迎えました。

　　　　　　陽気なニューヨーカー達は Happy New Year と笑顔の挨拶を交わします。

　　　　　　日本では見たこともない巨大なネオンサインに度肝を抜かれながら

　　　　　　１ドル360円の時代、本給2万6千6百円の貧しい若い船乗りさんは

　　　　　　　　　夜遅くまでマンハッタンを滑らない様に歩き回っていました。

その時から３７年後、ニューヨーク・タイムズスクェアに２００万人集まり

西暦２０００年を祝うカウントダウンをテレビのLIVEで見ることが出来ました。

日本の港では、正月休みを避けて大晦日までに商船は殆ど出港します。

ラストポート横浜から北米向けに針路をとると冬の北太平洋は    

発達した低気圧で大時化、船酔いに苦しみながら新年を迎えました。　

　私の船員時代、船と陸を結ぶ通信手段は無線電報しかなく、 

     　　　  正月が近づくと、年賀無線電報が輻輳します。 

     　　　  船から　「洋上はるかに新年のお喜びを・・・・」　

      　　　 陸から　「お父さん明けましておめでとう　・・・・」　

      　　　 日本の海岸局では七つの海を航海する船舶、

      　　　 南氷洋の捕鯨船や南極の昭和基地と心のこもった

      　　　 カタカナで綴るネンガ電報を取り扱っていました。

　　 　船舶通信士だった私は               　　　　　　船の無線室

     　 　七つの海からモールス符号で１字１字送受していました。

　　　　 現在は、通信衛星を使って手軽に電話で

      　　　　　挨拶を交わしているようです。

１９63年 ニューヨークでお正月　　　　　（　次回は　日本一周航路そして南米へ　）　　　

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