TOYOTA MARKU 2000 GRANDE (4AT) 2000年11月

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   マークUはいま
バブル真っ盛りの頃,“ハイソカー”なる言葉が流行りました。“ハイ・ソサイエティー・カー”のことだったんでしょうネ。若者が雪崩をうってマークUやローレル,クラウンやセド・グロなどのLサイズ4ドアセダン,ソアラなどの大型パーソナルカーに流れたものでした。若者の好み=スポーツカーという図式が崩れた時代ですね。大型セダン志向は今も“VIPカー”として細々と命脈を保っていますが,その後のRVブームのせいか,スポーティーカーの復権はないまま。レビン&トレノはなくなるし,フェアレディも影が薄いし…。

とはいえ“いつかはクラウン”に象徴されるセダンのステップアップも過去のものですね。RVブームは1BOXや大型オフローダーから,ミニヴァンやライトクロカン,ステーションワゴンへと主流がかわっても,あいかわらず続いています。そうした中でのマークUって,どんなポジショニングなんでしょう。これまでこの種の車に縁のなかった自分ですが,何を血迷ったか魔がさした(笑)のか,モデルチェンジ直後のマークUに試乗してきました(ホントはWebページ更新のためのネタ探しだったりします)。

   大きくて高出力で…
前置きが長くなりましたが,全高が6cmも高くなった新型MARKUは,1760oの全幅とあいまって正面から見るとクラウン並みの存在感があります。全高が増加した分,ヒップポイントがかなり上がっており,164cmの私にとっては地面に右足を残したままで乗りこむのが難しいほどでした(私の脚が短いだけか)。乗ってみるとただただ普通の車ですが,チャコール(薄いグレー)のシート素材はけっこう趣味がいいですね。先に出たカローラの路線を追求し,質感を上げたような感じの内装で,コロナ・プレミオのような安っぽさは微塵もありません。そうそう,リアドアの窓ガラスが全部下りきるのには驚きました。小さな三角窓があるとはいえ,さすがにサッシュ付きになっただけのことはあります。

試乗車は1G-FEを積んだ2000のグランデ。今となっては一番ベーシックなモデルです。3代目が登場したときには“グランデ”は最上級グレードだったのに…先代あたりからですかネ,こうしたネーミングになったのは。1G-FEとはいえ,とうとう出力は160PS(kW表示にはまだ馴染めません)に達しました。かつて本格的DOHC(トヨタのいうスポーツ・ツインカム)1G-GEがデビューしたときにGrossで160PSでしたから,普及版ハイメカ・ツインカムがNetで160PSを搾り出すなんて,変われば変わるものです(もっともスバルの現行モデルの2500は,4気筒とはいえ僅か167PSに過ぎません)。トランスミッションのセレクターはゲート式。アルテッツァなどと同様,3速とODが横の動きで操作でき,なかなかの優れものです。

   足は○,エンジンは…
足回りはしっかり感があり,カローラ・セダンの試乗記にも書いた下りのカーブは安定してクリアしました。操舵力や保舵力のバランス,ヨーの立ちあがり方やロールの出具合が自然で,トヨタもこのクラスになると(カローラあたりとは)違うなあと思わせるセッティングです。H∞TEMSというショックアブソーバーのセミアクティブ制御の威力でしょうか。ひところF1の影響からか高価な“アクティブ制御”が流行しましたが,“セミ”とはいえ標準装備にしてしまうのがすごいですね。もっとも悪友にいわせると「機械的なチューンで性能を出すのでなく,こんな電子ギミックを使っているのがいかにもトヨタ。きっとコンピュータ・シュミレーションで設計するから,コストがかからないのだろう」 昔人間の私たちの世代の価値観は,機械制御>電子制御なのです。

乗り心地はさすがにMARKUという感じでしなやかです。しかし,ことパワーに関しは1G-FEはいささか役不足。前述のように160PSの出力(トルクは20.4kgm)に対し,このクラスとしては今や軽いともいえる1380kgの重量ですから,まずまずのパワー・ウェイト・レシオだと思うのですが,上り坂でアクセルを踏みこむと「こんなものなの?」という程度の加速感でしかありません。出力特性やトランスミッションとのマッチングもあるのでしょうが,ややインフレ馬力表示(!)的印象です。フルスロットル時に限らず,エンジンノイズは少々耳障り。音量そのものは大したことはないのですが,音質の問題なのか唸るような感じで気になりました。2000cc6気筒搭載とはいえ,MARKUとしてはベーシックモデルなのだから,しかたがないのかもしれません。

セールスさんは「お買い得モデルです」を連発していましたが,これではマークUのイメージがちょっと崩れてしまいます。いちど2JZを積んだメインモデルに試乗してみたいものです。