NISSAN cube SX (4AT) 2002年10月

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  積載性は?
こんどのキューブ,文字通り名は体をあらわすようになりましたね。マスコットからしてサイコロ。「遊び道具を積み込んで出かける」というイメージを具現化するとこんな形,ということなんでしょう。で,実態はどうかというと,イメージが先走って使い勝手の詰めは今ひとつのような…。カーゴルームは四角で一見使いやすそうですが,リアシートはシートバックがパタンと倒れるだけのシングルホールド。座面とシートバックの厚み分,まともに段差がつきます。セールス氏は「リアシートが20cmスライドし,荷室が拡大する」と自慢げでしたが,だからどうした!という程度。例えばホームセンターで衣装ケースを買ったら積めるのか!と思ってしまいました。ハイトワゴンを標榜するならねェ…単なる2Box車並のスペースじゃあ自慢になりません。

  シート形状は?
詰めが,といえばシートもそう。先のセールス氏は「ソファーのように張りがあるでしょう」と誇らしげでしたが,自動車のシートとして高い評価が与えられるとはとても思えません。たしかに「ソファーのように」フラットなのですが,言葉をかえれば横方向のサポートは期待できない,「これで走るの?交差点曲がるだけでも心配じゃない?」という形状。おまけにグニャリとした感触で,いわばルーズで沈み込むタイプのソファーに近いもの。形でホールドせずとも,沈み込ませればいい…と考えたのかも。そんな訳はなく,左右のずれは少なくても,グニョグニョすれば上体を真っ直ぐに保持できません。カタログでは「座り心地とホールド性を両立」と謳っていますが,運転姿勢を維持するだけで疲れてしまいそう(ちなみに体重80kg+αの友人はしっかり沈んでよかったと言っていました)。HONDAのSM-Xのシートはさらにフラットでしたっけ。フルフラットにすることを,ベッドにすることを最優先してしまい,運転するための道具であることを忘れているんじゃぁないか…と思うのは私だけでしょうか。

  カルロ・スゴーンの合理化?
“売り”の一つの左右非対称の窓は,まぁ合理的といえば合理的。写真で見ると,左側面から後ろにかけて窓が繋がっているようで,いったいどうなっているんだろう,と思わせますが,単にブラックアウトしたパネルの上をガラスが被っているだけ。右との違いはCピラーに窓が一つ刳り貫かれていること。意地悪くいえば,右側の窓を一つケチっただけだったりして…。右斜め後方は,どっちみちここの窓からは見えないのだから,その意味では実に合理的なコストダウンの手法です。それを“売り”にしてしまうんだから,四半期の利益が過去最高になるのもむべなるかな。

  走り出したら
試乗を始めて最初に感じたのが,ステアリングの違和感。操舵力や保舵力が重いの軽いのではなく,奇妙な粘るような抵抗感を感じます。電動パワステのチューニングが上手くいっていないのかもしれませんね。重さそのものには特に問題は無く,操作に支障があるわけではありません。乗り心地はまぁまぁ,可も無し不可もなし。路面によってはいくらかどたどた感が出ますが,このセグメントでタイヤが175/65R14ならこんなものでしょう。シートがシートだけに,気合を入れてコーナリングを試す気には全くなりませんでした。ただ,長く続くカーブでも,変にロールすることもなかったのは○でしょう。

  う,うるさい!
エンジンはマーチの1.4gと同じだそうですが,シフトショックの出方もマーチと同じ。タウンスピードでも1→2,2→3のシフトアップが顕著に感じられます。それより何より気になったのが音。ガーガーゴーゴーとうるさいうるさい。エンジン音が前から侵入してくるだけではなく,車室そのもので共鳴しているのか,クルマ全体がうるさい感じです。マーチでは特に気になりませんでしたから,やっぱりクルマの形状の問題なんでしょう。フェアレディーZのような大排気量車じゃありませんから,回すとうるさいからといって,踏まなきゃ走っていかない。う〜ん,これはちょっと辛い。乗ってみなきゃ欠点が分からない…という意味では,フィットの乗り心地と双璧かも知れませんね。

  車庫入れ性能は最高
試乗の最後は車庫入れ。回転半径が非常に小さく,器用にくるりと回ります。まっ四角なボディー形状が幸いし,車両感覚が実に掴みやすい。これもZとは大違い(笑) 横転事故以来,とみに車庫入れが下手になっている(悪友には前からだとか,歳のせいだとか言われますが)私でも,駐車スペースの真ん中に一発で止めることができました。スーパーの駐車場で斜めに突っ込んだり,横にはみ出して止めても平気な人が増えている今日この頃,皆がこの車に乗ったら,そうした状況が少しは改善されるんじゃぁないか…。あまりの直角バックの楽さに,思わずお馬鹿なことを考えてしまいました。