太子山萬徳寺 (瀬戸市塩草町) 瀬戸MENU

舟形高59cm 一面二臂 坐像

   
【左】萬徳寺の馬頭観音    【右】無量壽堂の前,円内が馬頭観音

   赤津の町に近い寺
古くからの陶器作りで知られる赤津の町にほど近い太子山萬徳寺。聖徳太子の像を祭る寺で,道をへだてた北側には「太子町」という地名もあります。寺の横を通る広い道路は新しく開かれたものですが,200mほど北を通る県道33号(瀬戸設楽線)は,尾張から三河へと向かう旧三州街道です。山門を入ると正面が聖徳太子像を納める「皇太子殿」。そこから墓地を隔てた南側にある「無量壽堂」の前に,植え込みに隠れるようにして一体の馬頭観音がありました。

   明治19年建立
苔むして,いかにも年代を感じさせます。坐像なのに一面二臂というのは,この近辺では珍しい形式の例でしょう。わりに無骨な形の大き目の舟形の中に,ちんまりと座っています。像は下の写真からも分かるようにかなり立体的な浮き彫りになっていますが,残念なことに風化が進み,細部はよく見て取れませんが,やさしい表情のように思えます。像の向かって左側に「明治十九年□□三日」と読める記銘がありますが,右側は苔むしてまったく分かりませんでした。しかし手はただの合掌ではなく,馬頭印を結んでいるのが分かります。

   三州街道沿いの馬頭観音?
萬徳寺の場所から考えると,この馬頭観音は三州街道に沿って置かれていたものではないでしょうか。県道33号は最近も拡幅工事を行っています。道を作り直したり,道沿いに何かを作ったりする際に,石仏が寺社の境内に移される例は少なくありません。瀬戸市内でも信州飯田街道沿いの馬頭観音などが,寺や氏神社に移されています。馬や人の往来を見送っていた馬頭観音は,いまやお参りに訪れる人々を見守るだけになりました。


彫りの深い萬徳寺の馬頭観音