(財)星総合病院 精神科 東城雄二


     近年「心の病」の増加、多様化がマスコミなどで、かなり取り上げるようになりました。

    実際、新聞などでは「心の病」が関係していると思われる記事がかなり目に付きます。

    しかし、「心の病」とはどういうものであるのか、まだあまり知られてはいません。

    最近取り上げられている問題を中心として解説してみたいと思います。
  
  ★
「心の病」の症状 ★ストレスがもたらす心の病気と症状1・うつ病 2・パニック障害
  3・摂食障害 4・心的外傷後ストレス障害(PTSD) 5・神経症 6・心身症
  ★おわりに


「心の病」の症状
  
  例えば風邪を引いた時発熱するように、心の病気になると症状があらわれます。
 
 代表的なものとして次のようなものがあげられます


症  状

  ●不安状態(対象のはっきりしない漠然とした恐れの感情)

  ●うつ状態(ゆううつな気分が強まり極端に意欲が低下した状態)

  ●そう状態(気分、意欲などが異常に高揚した状態)

 心気状態(身体的にわずかな不調、あるいは明らかな障害がないにもかかわらず身体の健康に

       強くこだわり病気を心配する状態)

  ●強迫症候群(つまらない考えや行動であると分かっていてもこれに支配され追い払うことが

        出来ない状態)

 離人症候群(自分自身の存在感がなくなり現実感、生きている実感などの喪失に悩む状態)

  ●錯乱状態(精神の統一を欠いた混乱した状態。激しい興奮を伴うことが多い)

  ●幻覚妄想状態(主として幻聴「何もないのに人の声などが聞こえると感じる」、及び被害妄想

         「現実には起きていないが自分が何らかの被害をこうむっていると思い込む」

          などが発生している状態)

  ●意識障害

原  因

  
 体の病気に発生する原因があるように、心の病気になる時にも原因があります。

  一つは体の病気によって心の病気が発生するもので
外因とよばれます。

  次におそらくは遺伝子が関係しているものがあります。「本態性高血圧」などが体の病気の

  場合として挙げられ、これを
内因と呼んでいます。三番目には心理的なストレスが関係する

  場合です。これを
心因とよんでいます。最近この三番目の心因を原因とする心の病の増加が

  言われてきています。その理由としてストレスの増加あるいは多様化が考えられています


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ストレスがもたらす心の病気と症状
  
   ストレスの増加、多様化によって心の病も同時に多様化しています。それは次のようなものが

  あげられます。

  1.うつ病 2. パニック障害 3. 摂食障害 4. 心的外傷後ストレス障害(PTSD)

  5. 神経症 6. 心身症  7. アルコール等の薬物依存症 
 
症  状

  @ 心理面での変化 : 不機嫌、いらいら、気力の低下、不安など

  A 身体面での変化 : 倦怠感、疲労感、頭痛、動悸、めまい、肩こり、食欲不振、など

  B 行動面出の変化 : 喫煙、飲酒量の増加、過食、家庭内暴力など

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1. うつ病
   
 
    ひとことで言うと
気分が極度に落ち込んで何に対しても意欲や興味がなくなる病気です。

   このときに同時にいろいろな症状があらわれます。ゆううつ、億劫、不安、いらいら、

    自責感などの精神的な症状と睡眠障害、食欲低下、頭痛、めまい、吐き気、動悸、冷汗

    便通異常などの体の症状に分けられます。

   
悲観的な考えかたをして、ついには「生きているのもつらい」と感じることすらあります。

   
また、いろいろな病院で診察を受けても「特に悪いところは見当たらない」と告げられる


    ケースがあり、
実は体の症状を中心とするうつ病であったということもあります。

   「心に風邪を引く」という表現を最近良く聞くようになりました。

   
これらのうつ病を指すことが多いようです。実際日本人の約三割は生涯に一度は

    うつ病
にかかるといわれています。

    したがってありふれた病気であり、適切な治療によってほとんどは良くなりますが、

    まだ充分知られているとは言いがたいようです。

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2・ パニック障害
     
     最近増えてつつある心の病のひとつです。
「バニック発作」の出現によって

     特徴付けられます。次のような症状があらわれます。

症  状

   
 動悸、心拍数増加  ●  発汗  ●  震え   ●  息苦しさ(窒息感
  

      ●
 腹部不快感  吐き気、めまい、ふらつき ●  現実感の消失 ●  恐怖感など

    これらの症状はある
特定した場面での不安が強まることによって発生します。

   不安という者は誰にでもある日常的なことなのですが、健康な不安と病気の不安があります。

   健康な不安の場合、理由がはっきりしていますので周囲にわかってもらいやすいようです。

   そのため割と我慢しやすいですし、そう長くは続かない傾向があります。

   またいったん去れば気にならなくなるものです。 それに対して病気の不安は理由がはっきり

   しておらず、周囲にもわかりづらくしばしば長く続くようです。 いったん去ってもまた

   なるのではと更に不安になってしまうことがあります(予期不安といいます)。
 
   このような不安状態の時には心の病が発生していることがあります。

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3・ 摂食障害


    主に
心理的な原因で食べることをコントロールできなくなった病気の総称です。

   物を全くといっていいほど食べられなくなってしまう拒食症、食べることを止められなくなる

   過食症があります。

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4・ 心的外傷後ストレス障害(PTSD) 

    
阪神大震災で注目されましたが、このように災害、暴行、戦争体験など通常の体験を

    
はるかに越える強いストレスを受けることで発生します。次のような症状が発生します。

症  状

    めまい、頭痛などの自律神経症状を伴う不安

   
 うつ状態

    心に外傷を受けた体験の記憶がよみがえってしまう、いわゆるフラッシュバック

   
 その場所や関係していることを避けずにいられなくなる。

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5・ 神経症
 
     ストレスなどに対する心理的反応が病的な不安を発生させ、
心身にさまざまな症状を

    
引き起こす病気です。つぎのような症状がその代表です。

症  状

   
 不安感、恐怖感   強迫体験   ゆううつ   現実感の喪失


    疲労感、いらいら、無気力   身体面の症状(自律神経失調症の症状)

   
 行動の変化


   神経症は症状の特長によっていくつかのタイプに分類されます。そのほとんどがストレスや

  病的な不安が関係しています。次のようなことが引き金となるようです。


    対人関係の悩み

   
 親しい人の病気、死亡、別れなど

   
 社会的立場や地位の変化

   
● 居住環境の変化

   
 重責を果たし終わったとき

   
 過労の状態が続いたとき
 
   
 競争状態のとき
  
  
   
またその人自身の性格も関係することがあります。几帳面、神経質、物事にこだわりやすい、

  自分を抑えすぎる傾向、完璧主義などの性格傾向のある人は神経症にかかり易いと

  言われています。

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6・ 心身症

    これまで述べてきた病気とはやや異なり、
心が原因で起こる体の病気です。

   例えば「ストレスで高血圧になった」「ストレスで胃潰瘍になった」などがその例です。

   「心」の部分と「体」の部分の両方の治療を受ける必要がある場合があります。

   「心」と「体」は密接な関係があることが知られています。

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 おわりに

 
     これまで最近増えてきているといわれている心の病について述べてみました。

    勿論他にもたくさんの心の病があります。
精神分裂病、てんかんなどもそのうちの

    ひとつであり、百万人以上の患者さんがいると考えられています。さらには正式の

    病名ではありませんが
「燃え尽き症候群」「出勤拒否症」「五月病」など明らかに

    心の不安定になることを示す言葉が増えてきています。

    体の病気に治療法があるように心の病に対しても有効な治療法がたくさんあります。

    しかしまだまだ心の病についての知識は一般化されておらず、一人で悩み苦しんでいる

    方々が多いようです。

    どんな病気も早期に治療を受けたほうが回復までの期間も短いものです。

    それは心の病も同じですから、もしこのような状態になっている方、あるいは

    身近にそのような方がいらっしゃれば早めに専門機関を受診してみてください。

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       本稿は「懸虹」の特集して掲載されました。筆者、発行者のお許しを得て転載させて

       頂きました。 東城医師はじめ関係者のご好意に感謝致します。



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