鉛筆とクマ 札幌岳 冷水沢コース (1994年 6月8日・晴れ)


その1. 沢あり、小屋あり、急登あり?

 北海道の長い長い、長ーーい冬があけ、5月に入ると待ちに待った登山シーズンの到来となります。それでもまだ山頂には残雪があり、5月中は低山限定で足慣らし程度 (山行記禄を見ていただければ毎年同じ山に登っているのが分かるはず) の登山しかできず、本格的に登り始めるのは、この6月からとなります。
 「6月に入って一週間がたつし、もうそろそろ雪も消えている頃だろう」 と言う事で、本日の札幌岳登山となりました。
冷水小屋裏の急登

 登山口から冷水小屋までは、わりと平坦な道で歩きやすく、時折雪解け水で道が濡れているものの、靴を汚す程ではなく 「残雪の影響はないな」と、ちょっと一安心です。何度か冷水沢を渡って植林されたカラマツ林を通り、林道を横切ってさらに進むと、1時間20分程で冷水小屋に到着。(ここで嬉しい休憩タイム!)

 小屋の横には水場もあり、ちょっと一口いただく。
「うーーん、冷たくて うまいっ!」

 体も一息つく事が出来たので、小屋の前で写真を撮り、元気良く出発ーーっ!・・・と言いたい所なのですが、目の前に現れたのは私達がクマの次に恐れているあの「急登」だったのでした。 「うわー、こりゃ大変だぁ・・・」

 覚悟を決めて登り始めるものの、如何せん体力がついていかず、ついさっき休んだばっかりなのに、またまた休憩となってしまいました。 「また休むのか?」と、呆れ顔の父は、ここから別行動。2人を残してサッサッと先に行ってしまったのでした。(うーん、冷たい奴だ)


その2. 残雪くん現る!

 急登を登り切ると、そこからは平坦(すぎるくらい平坦)な尾根歩きです。先程の急登のバテバテもどこかへ吹き飛び、体も軽く心も自然と弾んできます。そんなふたりの前に突如現れたのは、一面銀世界の残雪くんだったのでした。

  「うわぁー・・・、道がないよーー」

 今思えばどうって事のない雪の斜面だったのですが、この時のふたりは思ってもみなかった雪原にビビリ、登山道がない事に不安を感じ、弾む心も一気に吹き飛んでしまったのでした。 最初の内は踏み跡を頼りに進んで行けたのですが、そのうち踏み跡はバラけだし、とりあえず木の枝にピンクのテープが付いている方向へ進んでみたものの、さらに踏み跡は減って行き、とうとう目印も踏み跡も見つけられず、どちらへ行って良いか分からなくなってしまいました。

 あたりはシーンと静まり返っています。 急激に心細さを感じた2人は、先に行っているであろう父の名前を呼び始めました。

  「お父さーん」  「お父さーん」  「お父さーーん」 叫べ!仲良しシスターズ!

(ここでもう一度言っておきますが、今思えばどうってことのない雪の斜面での出来事だという事を、お忘れなく)

 あたりは相変らず静まり返っています。 「どうしたらいいんだろう」 と途方に暮れていると、前方から人の声が聞こえて来ました。見ると前方斜め左から、男性2人組が、談笑しながら下りてくるではあーりませんか!

 「ホッ よかったぁ助かったよー」 私達は胸を撫で下ろしました。(ここで念の為もう一度言っておきますが、今思えばどうってこと・・・え? もう3回目はいいですか? 失礼しました。)
 その男性に、山頂と父の所在を確認し先に進んで行くと、すぐに登山道が現れ、山頂へもあっと言う間に着く事が出来たのでした。(ありゃ!)

 この事を父に話すと鼻で笑われたのは言うまでもありませんが、それでもあの時、男性が下りて来てくれて本当に助かったと思います。(迷ってしまったのはピンクの目印が、返って遠回りになってしまったのかもしれません。)

 鼻で笑われたのはシャクにさわりますが、自分で冷静に考えても 「どうして、あんな所で迷ってしまったんだろう」と、ちょっと恥ずかしい気がします。 さらにもっと最悪なのは、あの男性2人組に私達の叫び声が聞こえていた場合です。これは、かなり恥ずかしいです。と言うよりバカ丸出しです。(バカなんですけどね、基本的には)

 でも登山を始めて、まだ5回目の事、まっ、一度くらいこういう経験もありですよね? ねっ? ねっ?
札幌岳・冷水沢コース


  チューリップ おまけの話

 山頂に着いて寛いでいると、反対側の「豊滝コース」から、おそらく70歳はとうに過ぎておられるだろう白髪の男性が1人登って来られました。 話を聞くとバス停から歩いて来たとの事で、ダブルで驚かされましたが、そのゆったりと物静かに登って来た様子を見れば、山にかなり慣れている方だと言う事が良く分ります。

 その男性の、少し曲がって丸くなった背中を見ていると、若い頃さっそうと山を登っていた様子が目に浮かんでくるようで、妹はしみじみと(勝手な想像ですが)一つのドラマを見たように感じ、彼の後ろ姿を今でも強く印象に残っています。

 参考に姉にもその男性の印象を聞いたところ、姉いわく
「あぁ、憶えてるよ。 シャケ弁を食べていた人でしょ? 手作りの。 山ではおにぎりが相場だと思っていたけど、ああゆうお弁当もありかと思ったね! いやぁーじつにっ、あのシャケ弁は美味そうだった!!」 ですって。 同じ血のつながった姉妹かと思うと、涙があふれ出ました・・・。

姉の食いしん坊万歳!
私達は一体いくつまで山に登れるのでしょうね?


超人SakagさんのHPも見たい! 一人歩きの北海道百名山「札幌岳編」へ


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