鉛筆とクマ 旭岳〜裾合平 旭岳温泉コース (1995年 8月6日・晴れ→曇り)


その1. 手軽に登れる 北海道最高峰!

 「旭岳」は標高2290.3mの道内最高峰、そして今もなおモクモクと白い噴煙を上げ続けている活火山としても有名ですが、旭岳温泉からのロープウェイのおかげで誰でも手軽に登れる観光地として大勢の人で賑わっています。

 AM5:30、旭岳青少年野営場 (やったー!今回はぐっすり眠れたぞ!) を出発し、まずは「旭岳駅」でロープウェイの往復チッケト 大人・1人2600円を (げーっ、高かすぎるーっ)と心の中でいかにも貧乏人らしい文句を言いながら購入。すでにかなりの人が並んでいましたが、AM6:30発のロープウェイに乗り込み15分で「姿見駅」に到着。 そしてAM6:50、いよいよ登山開始となりました。

 駅を出発するとすぐに逆光で黒くそびえる旭岳と、数ヶ所からモクモクと吹き出ている噴煙がとても眩しく目に飛び込んで来ます。 20分程で「姿見ノ池」に到着。姿見ノ池とは、その名の示す通り旭岳の姿を逆さに映すエメラルドグリーンの池であります。
 パチパチパチと写真を撮り観光地気分はハイ!もうここでおしまい。旭岳避難小屋を背に、ここから本格的な登山の始まりとなります。 (頑張るぞ!)

 爆裂火口を左下に眺めながら、延々と火山灰の斜面を登って行きます。
  「ハァハァハァ・・・」
おっと!ここで早くも妹がバテだし、少し遅れ始めました。 うーん・・、どうやら妹はこのような火山灰の斜面は苦手なようです。

爆裂火口  一方、いつも妹と行動を共にし苦労を分かち合ってきた姉はと言うと、グングングンと軽快に父と共に登って行きます。 あれれ? 一体どうしたんだ? 姉よ・・・?
 (はっはっはっ、案ずるなかれ妹よ!私は何故かこういう斜面には強いのだ! でも岩場は苦手よ)お尻がデカイから

 くっそー(おっと!失礼)ちょっぴり悔しさの残る妹でしたが、でも平気、1人でも寂しくなんかありません。まわりは大勢の登山者で溢れています。自分のペースで登る事にいたしましょう。

 途中の休憩で妹も合流し、さらに傾斜の増した斜面を登って行きます。そして大きな岩が見え出してくると「金庫岩」はもうすぐです。

 金庫岩というのは、真四角のまさに金庫型の大きな岩です。しかし周りにはもう一つ、似たような岩がゴロンとしていて 「ありゃりゃ、どっちが本物の金庫岩なの?」と、戸惑ってしまいます。ですから、もう一方を「ニセ金庫岩」といい、登りで最初に目にするのはこっちの方の岩です。
 ここで気を付けなければならないのは、ニセ金庫岩の方にもハッキリとした踏み跡があるので、視界が効かない時などは迷う心配があるそうです。 89年の「SOS事件」は、ここで道を間違ったのが原因らしいとガイドブックにそう書いてありました。
 「週末の晴れた日には、こんなに賑やかで気持ちの良い登山が楽しめるのに・・・」と思うと、ちょっと切なくなってきます。

 さて、金庫岩を過ぎ、さらにさらに傾斜の増した斜面を登り切ると、そこは北海道の最高峰「旭岳」の山頂です! AM8:50 旭岳の山頂は大人数を収める十分な広さもあり、とてもすがすがしい気分です。 (でも山頂でラジオをかけっぱなしにするのは、勘弁してね)
 少し雲が出てきてしまいましたが、まだ大丈夫。私達は軽い食事を済ませ、次の「間宮岳」を目指して出発する事にしました。 ここで賑やかだった大勢の登山者とはお別れになります。


旭岳〜裾合平のルート図


その2. 裏旭を下り、裾合平へ (父 転ぶ!)

 旭岳山頂から、一部雪渓の残る「裏旭」を下って行きます。 ザクザクの雪渓の下りはとても歩きづらく、「雪渓滑り(尻セード)をしたほうが早いだろうな 」とも思いましたが、なにぶん雪渓滑りは以前の赤岳で懲りていましたので止めにしました。 裏旭を下り切ると道は平坦になり、ここがキャンプ指定地となっています。
 そして間宮岳への登りに差し掛かった所で、うしろの裏旭の方向から大きな叫び声が聞こえて来ました。

  「うわーーーっ!!」 「きゃーーーっ!!」

 ・・・どうやら若い子達が、裏旭で雪渓滑りをしている模様です。まわりは声をさえぎる物など何もなく、それはそれは丸聞こえでハッキリと聞き取れてしまいます。
とてつもなく恥ずかしい2人
 「・・・・・・。」 自分達もきっとああだったんだなーと思うと、1年経った今になってやっと、とてつもない恥ずかしさが込み上げて来ました。
(そう言えば、知らない人に写真まで撮られちゃってたなぁー。 ま、過ぎた事は気にしない 気にしないっと)


 旭岳からちょうど1時間で「間宮岳」へ到着。 今回の行程は時間にかなりの余裕があるので、間宮岳から分岐してちょっと先の「荒井岳」へ行ってみることにしました。
 しかし歩いて行ってみても標識など何もなく、ただ細い木の棒が地面に立っているだけでした。
  「ここが荒井岳なのかな?」 「さぁ・・・よくわかんないね」
もしかしたらここが荒井岳ではなかったのかもしれないけれど(なかったみたいです)、とりあえずまぁ良しとして、私達は元のルートに戻る事にしました。

 間宮岳に戻ると今度はお鉢平をめぐり、中岳分岐からの一気の下りとなります。
しかーし、ここでアクシデント大発生!!

 なんと!父が中岳分岐の下りで、体から前かがみ状態で見事にすっ転んでしまったのです!
あっ!  「あっ!」っと思った時にはすでに遅く、父のメガネのフレームはへし曲がり、口の中には沢山の土が入り、ほっぺたには切り傷で血がにじんでいました。

 「一体どうしたの!? 大丈夫!?」

 「いや・・・ペッペッ(口の中の土を吐いている)分岐からどのくらい下って来たのかなーと思って後を振り向いたらペッペッ、木の根につまずいてしまって・・・ペッペッ」

 (なぬっ?)

 「ふふ振り向いただとぉーー!? 下りながら後ろを振り向くヤツがどこにいる!? このバカチンがっっ!!」

 ・・・と、言いたい所を グッ!とこらえて、私達はやさしく(?)父のほっぺにバンソウコウを貼ってあげました。幸いやわらかい土の上の転倒だったので、ほっぺ以外の怪我は無くそのまま下る事が出来ましたが、何かあれば一大事です。もういい歳なんだからくれぐれも注意して下さいませ、おやじ殿よ・・・。

 さて、気を取り直して更に下って行くと、「中岳温泉」があります。温泉とは言っても脱衣所などの設備は何も無く、全くの自然のままの状態。写真で見たよりもずっと小さく感じました。 姿見駅から直接来る人達もいるみたいで、まぁまぁの人だかりです。
 この時は 「わざわざ、ここに入る人なんかいないよねー」 「いない、いない。絶対いないよ」と話していましたが、人の少ない時期ならそうでもないようです。(ね?Sakagさん)


自然色豊かな中岳温泉

さぁ、あなたならどうする?


その3. 裾合平から姿見駅へ

 下りも終り「裾合平」に来ると、そこは一面のお花畑です。お花畑は広大でとても綺麗なのですが、道の荒れ方はひどくちょっとビックリです。

 裾合分岐で左に曲がると後は「姿見駅」まで直進するのみとなります。 幾本もの沢形(途中でスキーを担いだ親子連れさんと会う)を渡りながら、1時間30分程歩いて行くと、登山の格好をしている私達が浮いてしまうほどの観光客の人、人、人でした。
 ※ 駅周辺は「夫婦沼」等があり、散策路となっているのです。

 まだPM1:30だと言うのに、ロープウェイにはすでに長蛇の列。待っている20分の待ち時間の間、たくさんのトンボ達にかまいかまわれ、PM2:50、無事「旭岳駅」へ到着です。
 今回は余裕のある割と楽なコースでしたが、父がすっ転ぶというアクシデントがあり、ヒヤッとさせられた登山でした。 ふぅ・・・。(やれやれ)


しかし、メガネのフレームが曲がりバンソウコウ姿の父の写真を見るたび・・・

父の写真

笑わずにはいられない娘達であったとさ

笑う娘たち


  チューリップ おまけの話  「父 滑る!」

 10月1日、それはこの年の最後の登山となる「定山渓天狗岳」(略して定天)で起こった悲劇でした。

  「うぎゃーーーーーーっ!!」

 林道を歩き始めて間もなく、女性のどす黒い叫び声があたりに忽然と響き渡りました。 「!?」 一体どうしたと言うのでしょう!? も、も、もしかして、あの恐ろしい熊でも出没したというのでしょうか!?

 ・・・いえいえ、ご安心ください。まだ本文には入っておりません。これは林道で「ネズミの死骸」を見つけてしまった妹の叫び声でした。
 「おどかさないでよー」 「こっちの寿命が縮まったぞい」 と他の2人の顰蹙をおおいに買ってしまいましたが、その後は何もなく、私達は順調に定天を登り詰めて行きました。

 山頂手前には、おそらく定天の名物と言っても過言ではない「ルンゼのロープ場」があります。たぶん5mぐらいはあるでしょうか、ウエストコルと呼ばれる岩壁を、ほとんど垂直上にロープで登って行くものですが、もしここで手や足でも滑らせたら一大事です。 「!?」 も、も、もしかして、ここで滑落事故でも!?

 ・・・いえいえ、ご安心ください。まだ本文には入っておりません。お尻の大きな姉はかなりもたつきましたが、3人とも無事に登る事が出来ました。

 さて、下りに入り、もう半分ぐらいは下ってきたでしょうか。定天の登山道は「熊ノ沢」沿いに延びているので何度か渡渉もありますが、沢の水量は少なく、飛び石で充分に渡れてしまいます。

 ツルン! おっと、飛び石で沢を渡っていた父が、石の上で滑って転んでしまいました!
「!?」 も、も、もしかして、全身ビショ濡れおやじか!?

 ・・・いえいえ、ご安心ください。父はとっさに左手をついた為、体を濡らす事もなく沢を渡りきれたのでした。
 「危なかったねー」 「濡れずに済んで良かったねー」と話しながら、私達は無事定天を下山する事が出来たのでした。

 ・・・あら? もう終り? 本文は一体どこに行ってしまったんだ?
じつは、もう本文が始まっている事に皆さんはお気づきでしょうか? そうです、父の「とっさについた左手」がポイントなのです。この時点ではさほど痛がっていなかった父の左手が、翌朝になると腕時計が着けられないほどパンパンに腫れ上がっているではありませんか!

 なかなか病院に行きたがらない父が、朝一番にすっ飛んで行ったのですから、よっぽどビックリしたのでしょうね。診察結果は、骨には異常はなくネンザだけで済みましたが、「一ヶ月ほど、あまり動かさないように 」との事でした。

  何だか今年は、父にとって災難続きの年でしたが、「もういい歳なんだから、もっと慎重に下らないとダメだ!」と言いたくても、父より体力の無い私達の言葉じゃ、説得力のかけらも無いのがちょっぴり虚しい娘達なのでした。


※ でも、さすがにこれ以降、父も転ばなくなりました。 よっぽど懲りたのかな?

父、捻挫
お大事に!


超人SakagさんのHPも見たい! 一人歩きの北海道百名山「旭岳編」へ


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