人口の推移から未来を考える 

 

●江戸時代初期から中期にかけて農業生産の向上により1000万人から3000万人に増加した。
●明治からの工業生産の向上により3000万人から2005年にピークの1億2800万人まで4倍に増加しその後漸減していく。
●現在は工業化の波が飽和状態にあり昭和元禄から平成享保といわれ停滞期にある。
マルサスの人口論からいえば人口の増加を抑えようとする予防的妨げ(晩婚化・晩産化・非婚化による出生の抑制)によるものである。
●21世紀の高齢化・少子化社会の経済に与える影響
@労働力人口の減少と高齢化
A年金・医療などの社会保障負担の増大
B労働生産性と適応力の低下
C消費需要の減少と消費構造の固定化
D投資意欲の低下と貯蓄能力の減退
E労働力の流動性低下と失業リスクの増大
F医療・介護需要の増大と保険・福祉・マンパワーの不足
G老人支配による経済的活力の低下


●1995年の57億人から2000年の62億人、2025年の85億人を経て、2050年には約100億人に達し、2100年に110億人を超えたあたりでようやく飽和化する。
●人口の増加はほとんど発展途上国である。
●人口増加に伴い食料・資源・エネルギーなどの大幅な需要増加を招く。
●環境問題は拡大する。二酸化炭素の温室効果による地球温暖化、酸性雨、海水汚染、オゾン層破壊などもひろがる。


●2004年1月1日現在の日本の人口は1億2750万人で男が6225万人、女が6525万人である。
●少子化と言われているように人口構成のグラフがしりすぼみで不安定な形をしている。
●50〜54歳、55〜59歳のベビーブーム世代と25〜29歳、30〜39歳の第2次ベビーブーム世代の人口が目だって多い。
●生まれてくるときは男が女より多いが、50〜54歳の世代からは女のほうか男より多くなる。75歳以上の男女を比較すると女が長生きすることが明確に現れている。



 合計特殊出生率は、15歳から49歳までの女子の年齢別出生率を合計した値で、1人の女子が一生の間に産む仮の平均子ども数に相当する。合計特殊出生率2.08人を下回れば、親世代より子世代の数が少なくなり、やがて総人口は減少へと向かう。

 合計特殊出生率の低下の要因は、未婚化、晩婚化と晩産化が進んでいるためと、子供を産まない夫婦が増えていることだ。
厚生労働省の分析では「結婚を先送りする者・結婚をしない者の増加により、そもそも出生行動の主体となる夫婦が少なくなることによるもの」としている。堺屋太一氏は「小子化の要因は、官僚が将来に対して極めて悲観的な見通しをアナウスしているため、国民の間に将来の不安を高めているからだ」と言っている。合計特殊出生率の低下は先進文明国で共通してしている現象で、年金をはじめとする福祉の充実が、逆に親子関係の絆を緩め、人間本来持っていた生殖能力を低下させているように思う。動物園のチンパンジーも生殖能力が低下しているといわれている。もし年金制度がなければ、老後の生活は自分の子供に依存する割合が高まり出生率も上がります。福祉の過保護状態から脱却して、人間本来持っている活力を取り戻す時期にきているようだ。

経済面での影響
・労働力人口の減少
・経済成長への制約
・現役世代の負担の増大
対策:高齢者労働力の活用、移民の受け入れ

社会面での影響
・子どもの健全な成長への影響
・地域社会の活力の低下


人口が減って繁栄した例

 人口が減少し、土地が余り、外国からの物資や情報の流通が盛んで物価が下がる。こんななかで経済と文化が発展した時代が、かってあっただろうか。15世紀のイタリア半島だ。イタリアの人口は1340年は930万人だったが、その後は寒冷化や黒死病で激減、1500年には約4割減の550万人になっていた。それにもかかわらず、経済と文化は大発展、やがてルネサンスの花が開くことになる。どうしてそうなったのか。人口の減少で労働力が不足になり賃金が上がったからだ。賃金の上昇、物価の相対的下落である。このため、生産性の高い産業に人口が集中、都市が発達する一方、収益の低い痩せ地は放牧場となった。要するに、15世紀のイタリアでは、地域間産業間の競争が起こり、減少する労働力がより効率的な地域と職場に配置された。この結果、国民経済は大発展、一般大衆も豊かになり、工芸品や芸術品への需要が増大した。ルネサンスの優れた芸術作品は、文化市場の拡大によって、多くの芸術家が競い合ったことから生まれたのだ。21世紀の日本にも、新しいルネッサンス、知価社会の開花が期待できる。
    (堺屋太一著 「平成三十年」への警告より)


日本の高齢化率(65歳以上の割合)は、まもなく未成年比率(19歳までの割合)を超え、2005年に1億2800万人をピークに減少し始める。
今後30年高齢死亡者が急増し、死亡者と生まれてくる赤ちゃんとの差が年100万人に広がる
総人口は2040年ごろに1億人、2075年ごろには6000万人代と終戦時レベルまでに低下、百年後は、4000万人を切り、明治維新時と同程度まで急減する

(出所:政策研究大学院大学 藤正巌教授
2030年の労働人口は2000年より約2割減少する。2030年の国民所得は約15%減少すると見込まれている。
国民所得は2008年で減少に向かうが、1人当たりの国民所得は2013年まで上昇を続け、2030年でも2000年に比べ1.3%の減少にすぎない。これは、今後も現在程度の技術革新が続くとみているからだ。右肩上がりの経済から右肩下がりの経済が到来する。社会全体がスリム化し、労働時間が減少する。賃金の伸びは望めないものの、質的に豊かな生活を送れるかどうか、個人の価値観の変革が迫られている。
(出所:政策研究大学院大学 松谷明彦教授


低位推計が政策研究大学院大学の藤正巌教授のデータとほぼ一致している。
高位推計:合計特殊出生率は平成12(2000)年の1.36から直ちに上昇に転じ、平成61 (2049)年には1.63の水準に到達する。
中位推計:合計特殊出生率は平成12(2000)年の1.36から平成19(2007)年の1.31まで低下した後は上昇に転じ、平成61(2049)年には1.39の水準に達する。
低位推計:合計特殊出生率は平成12(2000)年の1.36から低下を続け、平成61(2049)年に1.10に達する。


統計局推計の現在の日本の人口

米国センサス局推計の現在の世界の人口

国立社会保障・人口問題研究所