エゴノキ

 5月中旬ごろから咲いていたエゴノキの白い花も終わろうとしている。びっしりと枝について咲かせていた白い花が地面に目立つようになってきた。エゴノキは、万葉集で「チサ」と呼ばれ、白い花のうつろいが歌われている。

いきに思える我を山ぢさの花にか君がうつろいぬらむ
万葉集 巻7−1360 作者不詳(女性)
私は命をかけてあたたを思っているのに、あなたはあの山ぢさの花のように心がわりしてしまったのでしょうか。

息の緒 : 命をかけて    山ぢさの花にか : しぼみやすいエゴノキの花のように    うつろう : 心が変わる    


山ぢさの白露しらつゆおもみうらぶれて心も深くが恋やまず
万葉集 巻11−2469 柿本人麻呂
山ぢさが露に濡れて重く垂れ下がっているように、しょんぼりとうなだれてひたすら恋続けている私です。

うらぶる : 悲しみに沈んでしょんぼりする        柿本人麻呂 : 生没年不祥
                                             持統・文武の両天皇に仕えた宮廷歌人


 エゴノキは江古田の地名の語源になった木でもあります。エゴノキが群生していたから江古田になったとなったいう説は、考古学者柴田常恵しばたじょうえ(1877〜1954)によるものです。

 江古田の語源には、もうひとつ江古寺に由来するという説があります。現在江古田の森と呼ばれている所(結核療養所跡地)は、小字寺山の地名が残っていました。そこに江古寺があったが、文明九年(1477)の江古田原・沼袋合戦のときに焼失したという伝承があります。2003年から2004年にかけて発掘された江古田遺跡は江古寺跡の可能性があります。



エゴノキの実(哲学堂公園 2005年7月16日)
エゴノキの果皮は、サポニンを含み麻酔効果があり、実をすりつぶして川に流して、浮いてきた魚を捕ったりしました。また、サポニンは泡立つことから、石鹸の代わりに使われていました。
サポニンは、水と混ぜて振ると泡立つ性質があり、「シャボン」の語源になっています。大豆、小豆、茶、ニンニク、朝鮮人参にも含まれます。溶血作用があり、適度な摂取により、動脈硬化の原因にもなる過酸化物質の生成をおさえ、コレステロールや中性脂肪の生成を抑制します。