罰ゲームの果てに

罰ゲームの果てに 2018_01_18

 

ゴミ袋を用意して玄関に戻ると、ちょうど最初の根っこが取り出されるところだった。
この時点ではまだヘドロが流されてはいないので、当然汚物まみれである。
これが超気持ち悪かった。
切り出した根をバールのようなもので引っかけて持ち上げているのだが、ただの汚物じゃないんだよ。
黄色いゼリー状のものがべっとりと付着していて、それがプルプル震えている。
見た事のない生物のようだった。
こんなものを私の体から出した覚えはない。
おそらく何かの菌が繁殖したんだろうな。
ちゃんと洗ってもらいたいものだが、なんせ彼は1人でやってるから、そこまで気を回してはくれないし、市の職員も手伝ってはくれない。
私も自分が出したものをあんまりイヤがるわけにもいかなかった。

その異様な物体をゴミ袋に入れようと、業者が私の方に向き直ったとき、重要な事に気付いた。
思いのほか大きいのだ。
45Lのゴミ袋にちょうど入るか入らないかぐらいの大きさ。
もうちょっと小さくしてもらいたいものだが、そこまでサービスはしてくれない。
これをゴミ袋に入れるには、ゴミ袋を横一杯に拡げなければならなかった。
どうやって?
そりゃ袋を手で横に拡げるのさ。
だれが?
市の職員はもちろんやってくれないから、私が。
こっちはやってもらっている立場だから断れるはずもなかった。

やむを得ない。
私は覚悟を決めてしゃがむと、ゴミ袋を両手でグッと拡げた。
すると私の目の前をその異物がゆっくり上から下へ通り過ぎていくのである。
この世のものとは思えない光景だったな。
私は普段、出した便を見ないですぐ流しちゃうから、ほとんど見た事ないんだよ。
それをこんな間近で凝視するハメになるとは思いもよらなかった。
もちろん臭いも強烈だ。
これはなんの罰ゲームなんだよ、と思ったものである。
もっとも、排水枡がどこにあるのかも知らないで糞尿を垂れ流し続けていた事に対する罰なのだと言われれば、そうなのかもしれないが。

結局、都合3つ大きな根っこを取り出した。
その度に私はゴミ袋を拡げ、手袋は汚物で汚れた。
最後のヤツが一番大きくて、ゴミ袋に入れたものの縛る事が出来ず、後日私が更に小さく刻んで捨てる事になったが、それはまた別の話。
根っこが片付けば、この騒動は終わったに等しかった。


つづく