根っこを取り出してしまえば、もう水を流すだけの話である。 玄関の水道から水を注ぎ込むと汚物は概ね流れていった。 業者さんが、念のためにお風呂の水を溜めてから一気に流してくれというので、その通りにすると特に問題なく水は流れていく。 これで一件落着である。 排水枡のフタを閉じて、作業は終了となった。 後片付けを始める業者さんに私が、これはまた凄い仕事ですね、と語りかけると、まあ慣れだよ、と返ってきた。 最初はものが食えなかったが今では全然平気、現場でも食える、といって笑っていた。 小汚いおっさんがちょっと輝いて見えたな。 こういう仕事をしてくれる人が世の中には必要なんだ。 業者さんは道具類をかたづけて車に乗り込むとすぐに去って行った。 それとほぼ同時に市の職員も。 私はお礼を口にしつつ、それを見送った。 玄関は水浸しで、水で流された泥が敷地外まではみ出しており、オマケに小枝などが散乱していたが、もう今日はイイかと私は思った。 だって、ちょうど暗くなってきたから。 この時点で17時15分ぐらいだったか。 なんか疲れたし、片付けは明日でいいやと思い、くっさいゴミ袋を車庫に運んで作業を終える事にした。 汚物のついたゴム手袋を車庫のゴミ袋に放り込んで、私は家の中に戻った。 そして、汗だくではあったが、作業着だけを洗濯機にかけてから私はシャワーを浴びた。 汚物が他の服に付着するのはイヤだからね。 他のはまた別に洗濯する。 シャワーを浴びながら今日の出来事を振り返ると、まんざら悪い事ばかりでもなかった。 結局私は1円も支払っていないのである。 市の職員は、繰り返し詰まらせる人には請求する事もある、とは言っていたが、今回の請求については何も言わずに去って行った。 おそらく請求されないのだろう。 しかも今後当分の間は下水のトラブルに見舞われる事もないはず。 そんなにすぐに根っこが伸びるとも思えないし、そもそも排水枡のまわりに植物が生える事を私は許さない。 万が一詰まっても、下水の構造が理解できたから、ある程度は自分で対応できそうだし。 という事は我が家に関する心配事が一つ減ったとも言えそうだ。 まだまだ住めるのかも。 引っ越すのも建て替えるのもメンド臭いし、住めるなら住み続けるに越した事はないだろう。 終わり |