クラシアンの作業員はいまひとつ冴えなさそうな30才前後の男性であった。 人は良さそうではあったが。 彼はまずトイレの詰まりを確認した。 すると、朝とは違ってすんなり流れていった。 何度か流したのちに、外の排水溝を確認しに行くと、コポコポ音がする。 どうも外の下水管がつまっているらしいのだ。 その後しばらく彼は玄関のあたりをウロウロしたり、地面を掘ったりしてた。 何をしているのか聞いてみたところ、排水枡を探している、という。 排水枡とは何か? 排水枡とは下水の根管(道路の下を通っている本管に接続するための管)の手前に作る一時貯留層みたいな場所らしい。 上手く流れているときは必要ない場所だが、これがないと万が一詰まった場合に根管を掘り返さないと作業出来ないので、家を建てるときには必ず排水枡を作るのだそうである。 排水枡があれば、ここから清掃作業が出来るのだ。 ところが、排水枡が見つからない。 普通は本管に近いところ(道路側)にあるのだそうである。 玄関を散々探した挙げ句、車庫側に回ってみたりもしたが、結局見当たらない。 30分ほど調べた挙げ句、彼は断念した。 そして、ダメ元で排水枡より手前にあると思われる排水溝から高圧洗浄してみますか?と提案してきた。 費用は二万五千円ほどかかるという。 トイレが使えないことにはどうしようもないから、私はそれに同意した。 それから約45分ほど彼は奮闘した。 排水溝から高圧洗浄のノズルを入れて、どこにあるか分からない終端を探りながら洗浄を続けたのである。 しかし、それも無駄であった。 最初からこうなることは分かっていたんですけど、と彼はつぶやいた。 台所やお風呂からの排水が集まってくる排水溝を見ると、濁った水が面一杯まで溜まっていた。 一時はある程度流れていたのに、かえって流れなくなってしまったようだ。 彼は私に、市役所に連絡してもらう他に手がない、と告げてきた。 原因は根管にあるとしか考えられない、根管は市役所の管轄で、勝手に弄ってはいけないのだと言う。 この時点で既に14時半を過ぎており、今日はもうダメだろうと思った。 当面のトイレをどうすればいいのか・・・。 近所にある小学校の正門脇にトイレがあって、夜中でも電気が点いているから、あそこを使わせてもらってもいいのだろうか、などと考えつつ私は市役所に電話した。 すると、これから来てくれるという。 少しだけ希望の明かりが灯った。 クラシアンの作業員は市役所の職員が到着するのを待つ事なく帰った。 帰り際に料金の事を聞くと、要らない、という。 私はサインした時点でどういう結果であれ払うつもりでいたので、せめて基本料金だけでも払おうかと提案したが、それも彼は受け取らなかった。 なんのお役にも立てず申し訳ない、と言いのこして彼は去って行った。 ネットで検索するとクラシアンの悪口が一杯出てくるけど、私は今まで一度も酷い目に遭った事はない。 また何かあったら依頼しようと私は思うのであった。 つづく |