ニコラス・ケイジ主演の映画に『救命士』というのがある。 10年ぐらい前の作品かな。 あんまり面白くはなかったのだが、ヤケに印象に残る作品ではあった。 というのも、主人公が救命中毒みたいなのに罹っちゃうんだな。 心停止した人を蘇生させるのとか、もの凄い快感を伴うらしいのだ。 もう人を助けたくて助けたくて仕方ない。 身も心もボロボロになるまで救助に行かずにはいられなくなってしまう。 人を救うという普通はポジティブに捉える行為を病的に描くってのはなかなか新鮮だなあ、と思った記憶はある。 考えてみれば、確かにそうなんだ。 人間に生命を創造することは出来ない。 命を創り出すことが出来なければ、次に価値があるのは今ある命を失わせないことだろう。 ゲーム的に考えるとこれは見逃せないよな。 プレイヤーの行為に極めて大きな価値付けをすることが出来る。 医者にせよ、救命士にせよ、プレイヤーを置き換える対象としては、これ以上にないポテンシャルを持っていると言えるんじゃないか。 逆方向に喜びを求めていくと、人の命を奪うことになってしまい、実際そういうゲームは多いんだけど。 いやいや、ところで面白かったな、『HOSPITAL. 6人の医師』。 急いでやるのが勿体なかったので、Aランク以上を取得するまでは先に進まないと決めごとを作ってやっていたら、クリアするのに少々時間がかかってしまった。 このゲームの面白さはなんと言っても、同一性の高さだろうと私は思っている。 動作がいちいち理にかなっているんだよな。 例えば、外科でメスを使う場合と内視鏡でメスを使う場合は操作が違う。 内視鏡の場合は右手は内視鏡の出し入れだけを行い、細かな操作は全て左手側で行うのだ。 似たようなことでも、それらしい操作を盛り込んでいるのである。 同一性が高いと、やってることはイライラ棒と同じでもプレイヤーが得られる喜びは違うんだよ。 あんまりポインティングの精度を問わないところもイイ。 手順や手際の良さ(制限時間)を重視して、精度は適当でも構わない、という作り。 ポインティングの精度を問うと、どうしてもDSには敵わないからな。 そこをゲームにしなかったのは大正解じゃないか。 左手側の操作をアイコン見ずに出来るようになると、いかにもスーパードクターという感じがして気持ちいい。 置き換える対象がへっぽこな医師よりは、スーパードクターの方が喜びは増すだろうから、得をするという意味でも正解だろう。 この『HOSPITAL. 6人の医師』は置き換え対象の持つポテンシャルを見事に活かした作品だと私は思う。 Wiiに於けるゲーム作りはかくあるべしという感じだな。 もっとも、よく出来ているからといって売れるワケじゃないみたいだが。 内視鏡担当医がなぜか武士と忍者の中間みたいな役どころで、しかも正装が花魁風という珍妙さから察するに、初めから海外しか狙ってないからいいのかな? |