陽明学の使徒

陽明学の使徒 2005_08_08

 

郵政民営化法案が否決された。
小泉首相は衆議院を解散するという。
大変残念なことであった。
是非彼の信念を貫かせてやりたかったのだが。
(これを書いている時点ではまだ解散していない)

私は「陽明学」というものに憧れていた。
陽明学というのは中国の明の時代に王陽明という人物が考え出した思想体系のことである。
簡単にいうと、自分が正しいと思うことがあれば、自分の良心に従ってそれは実行されなければならない、というような思想である。(知行合一)
革命思想につながりやすいので、江戸時代なんかはご禁制の学問であった。

私たちが学校で習った歴史上の人物だと、大塩平八郎なんかは陽明学の使徒である。
私たちは「大塩平八郎の乱」という言葉で彼を知る。
しかし、彼自身は争乱を起こす必要などなかった。
彼は体制側の人間で別に困ってなどいなかったのである。
それでも、米価の急騰に生活を圧迫される民衆をほかっておくことは出来ない、ほかっておくことが出来ないならば蜂起するしかない、と彼は自滅を選んだ。
間違っても幕府は倒せない、一族郎党全員死ぬことになる、と分かっていてもやらねばならない。
陽明学というのは大変苛烈なのである。
そしてだからこそ美しい。
そんな人生を送ることが出来たらどんなにか本望だろうに、と思うのだが、残念ながら私にはそこまでの気概はないのである。

昨日(8月7日)ニュースで小泉が「殺されてもいいんだ」と言ってる話を耳にして、彼も陽明学の使徒なのかな、と思ったりしていた。
陽明学というのはもっと苛烈なもので、意外とバランス感覚を持っている小泉には合わないかもしれないけどね。

小泉は偉い男だ。
バックグラウンドを持たない男が、郵政民営化を一度も取り下げることなく、3度総裁選を闘って、3度目に奇跡を起こした。
変人と言われながら決して彼は信念を曲げなかった。
現実的なアプローチを取っているので、美しさが光り輝く、という感覚ではないにせよ、私はやはり美しいなと感じてきた。

私は郵政民営化に賛成だけど、法案の中身はあんまりよく知らない。
伝え聞くところによると、民営化ペースが遅すぎるような気がしている。
それでも、何とか彼に郵政民営化をやらせてやりたいな、という気になっているんだ。
応援するぐらいは自由だからね。



<後日談 2005_09_12>

総選挙が終わった。
ビックリするぐらいの自民圧勝だった。
これで小泉も郵政民営化法案と通せるだろう。

いま思えば、森元首相が小泉首相との会話を記者に話した絵が決め手だったのかな。
おそらく自民党内に向けて、小泉を説得することは出来ない、俺には無理だ、ということを示すためにわざわざチーズや空き缶を持って外へ出てきたんだろう。
わざわざチーズや空き缶を持って外へ出てくるなんて普通考えられないからね。
あの行為が「殺されてもいいんだ」という首相の言葉に真実味を持たせた。
私だけじゃなくて多くの人の心に響いたらしいからな。
何がどう影響するか、人の世はわからないものだ。


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