若いって素晴らしい

若いって素晴らしい '99_08_06

 

歳をとると、次第に心が堅くなってくる。
心に壁をつくることばかり上手くなってしまう。
そんなんじゃ人生つまらないと思うのだが、如何せんままならない。

銭湯で高校生くらいに見える3人組を見た。
どうも銭湯は初めて様子で、妙にはしゃいでいる。
周りをかえりみず大きな声で話す彼等を見ていると、イヤな記憶がよみがえった。

いつだったか、やはり高校生くらいの3人組が銭湯の中にハンディカメラを持ち込んで、自分達の遊んでいる姿を撮影し始めたことがある。
彼等が写るぶんには問題なかろうが、周りの人も写ってしまう。
迷惑きわまりないことは明らかであった。
しかし、周囲の冷ややかな目にも頓着することなく、番台のおばちゃんに注意されるまで彼等は騒ぎ続けた。

私には、その時の3人組といま目の前にいる3人組が同じように思えた。
あるいは同じだったかもしれない。
もしカメラを持っていたら、同じように騒ぎまわったかもしれず、本質的に異なっているとは言い切れないのだ。
私は鏡に映る彼等に注意を払い続けた。

すると、彼等がしきりと銭湯の感想を漏らすのが聞こえてきた。
「すげー気持ちいいよ、めっちゃ広い!」
「うひゃ〜、マジこれ!気持ちいい。」
「これ、なんだっけ?ジェットバスっていうンだっけ?いいよ、マジで」
どうやら、いたくお気に入りのようだ。

私の通っている銭湯には、ジェットバス(横向きに水流を出す)と泡風呂しかない。
サウナがついていたり、うたせ湯があったりと、サービス満点の銭湯も知っているだけに、私は彼等の感想を意外な気持ちで聴いていた。
そして鏡に映る、本当に嬉しそうな彼を眺めて羨ましく思った。
こんな些細なことで、これほどにも楽しめるなんて・・・。
これが若さというものなのだろうか。

このところ、私は自分が歳をとりつつある事が信じられなくなっていた。
1月に怪我をしたときは、自分も歳だなと思ったが、怪我が治るにつれてまた永久に今の自分が続くような気がしていた。
しかし気がつくと、若かりし頃の自分とは変わっているのだ。
心の感度が落ちている。
どうすることもできない。

出来ることならば取り戻したい、若さを。
些細な事にも反応してしまう心を。
若いって素晴らしい。


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