なんと気の毒なことだろうか。 あれは可哀想。 私はかなり同情している。 東京には至る所に踏切がある。 待たされると腹が立つので、踏切を通らないで済む環境で暮らしたいものである。 しかし、結局毎朝踏切を通ることになった。 踏切を通らないでむしろ近道になる坂を登ればいい、と考えていたのだが、朝寝起きで坂は辛かった。 ついつい妥協して、踏切へ向かうようになってしまったのである。 下見をした際に(以前書いた話)私がこの踏切を疎ましく思ったのには、待たされるからだけではなく、もう一つ理由があった。 踏切の前後の道が狭くて、自転車と車がすれ違うスペースがない。 非常に危ない道だなと思った。 ところが慣れてくると、車のやり過ごし方が分かってくる。 踏切が長い間閉まっているということは、対向車線がガラ空きだという事も意味しているのである。 対向車線を通って、先頭の車の前まで出てしまえばいいのだ。 自転車はやりたい放題なのである。 そしてやりたい放題なのは自転車だけではない。 同じ事をバイクもやるのである。 私は気分的には自分と彼らは同じだと思っていた。 ある朝のことである。 いつものように反対車線から車を追い抜いて踏切の最前列に出ると、踏切にたくさんのお巡りさんがいた。 なんだろう?と思ったら、なんとバイクを捕まえるために待ちかまえていたのだ。 私と同じ事をしているだけなのに、バイクだからということで、彼らは次々と捕まっていった。 私が見ていた範囲だけで4人。 あの調子だと、おそらくあの朝だけで100人は捕まったんだろう。 気の毒だな、と思いながら、私はその様子を眺めていた。 もっとも自転車にも本当は罰則があるんだそうだが。 捕まえるつもりがあるなら、初めからそう告知してもらいたいものである。 頑張って坂道登ってくるからさ。 |