私はこの世に4080gで生を受けた。 いや、書類上は4100gだったかもしれない。 私を取り上げた看護婦さんが、「20gオマケして、4100gにしといたげるわ」といったときから私の運命は決まっていたのだ。 とにかく私は生まれてこのかた、人並みであったことが一瞬もない。 常に大きかった。 それ故、服に困った。 小さいときは大人の服を着れば良いが、中二ぐらいでもう通常のサイズでは間に合わなくなった。 たまたま地元に大きい服の卸問屋があったので、そこへ行って出荷前のモノを分けて貰ったものである。 何せ問屋さんなので同じ商品がずらっと並んでいるだけだ。 選ぶ余地はなかった。 せいぜい色違いだけ。 私にとって服はそういうものであった。 ところが、就職して東京へ行ったら少し事情が変わった。 渋谷に「サカゼン・ゼンモール」という大きい服の専門店があって、初めて見たときはびっくりしたな。 着られる服がこんなにたくさん存在しているとは思いも寄らなかった。 服は初めて選べるものになったのである。 私は今でも通販で利用している。 今ではありがたいことに、ユニクロでも大きい服を扱うようになった。 大きい服は競争が激しくないから、儲かるんだそうである。 もっとも私はちょっと着る気がしないけど。 およそ服に文句をいったことがない私から見ても、だっさいデザインだな、と思うのだが、意外とみんな着てるから驚く。 みんなが着てるから恥ずかしくないんだろう。 そんなユニクロの商品を眺めていて、私は驚くべきモノを見つけた。 股引である。 まさか私が履ける股引がこの世に存在するなんて! 買ってみたら驚天動地。 嘘みたいな暖かさだった。 こんなモノがこの世に存在するのなんて、思いも寄らなかった。 この冬は股引のおかげで全然寒くなかったな。 思いも寄らなかったといえば、足が寒いと感じることがそもそも思いも寄らなかったが。 私は常に暑かったのだ。 足の先が寒いと思うことはあっても、太股とかが寒いなんて5年ぐらい前までは感じたことがなかったのに。 歳をとると、体が発熱しなくなるんだよ。 体が衰えるのと時を合わせるようにして股引が買えるようになるなんて、全く以て有り難いことである。 |