春一番の風をまともに受けて、恵比寿ガーデンプレイスを歩いていた。 大きな建物の横を歩いているせいか、風が強くてちっとも進まない。 体が横に大きいと、受ける風量も違うよなあと、あらためて己の体の特異さを思い知ることになった。 さて、恵比寿には「動く通路」がある。 そう、あの浮浪者の追い出しでもめたやつである。 もっともあれは新宿の話だが。 私はあの「動く通路」に乗るのが苦手である。 自分のペースで歩きたいのに、止まっている人がいたり、ゆっくり歩いている人もいれば、君のせいで進めないじゃないか!といわんばかりにプレッシャー をかけてくる輩もいる。 かえって気疲れしてしまうのだ。 だからといって動かない通路を使うと、かなり一生懸命歩いても、動く通路上をゆっくり歩く人に負けてしまう。 悔しい。 心ならずも、結局乗るわけだ。 そして疲れる。 もういっそのこと、「動く通路」ナシにしようよ、と思った。 で、なくなったらどうなるか考えてみた。 別に変わらない?とも思ったが、新宿の場合なんかとは違う事情があることに気づいた。 この動く通路は、恵比寿ガーデンプレイスの人工的大動脈なのだ。 ご存じない方はそんなこと言われてもピンとこないだろうけど、恵比寿ガーデンプレイスは計画的につくられたアミューズメントプレイスなのだ。(そう言いきって良いかは自信がないが) そこへ人を運ぶためにつくられたのが「動く通路」なわけであり、それがなければ人はそこへ動かないかもしれない。 「動く通路」は土地に価値を創造しているといえるのだ。 そこが新宿とは違う。 新宿の場合は、既に徒歩による経済圏が出来ている部分に設置しているだけなので、投資したお金ほどの効果があるかは疑わしい。 結局、恵比寿ガーデンプレイスの「動く通路」は極めて合理的な存在であり、ナシにするわけにはいかないのだ。 春一番が吹く、風は強いけど気温は高い3月5日、精神的発汗を伴うと思われる汗をかきかき、人の合間を縫って歩きつづけた。 高々レンタルビデオ屋に行くのに、何でこんなに疲れなきゃならんのだ。 納得いかない。 みんな私と同じスピードで歩け!止まるな!追い越すな! |