さよなら、私の『ソフト焼きしょうゆせんべい』

さよなら、私の『ソフト焼きしょうゆせんべい』 2004_12_26

 

私は愛していた。
COOPブランドで売っていた『ソフト焼きしょうゆせんべい』を。
18枚で100円のしょうゆせんべいを私はこよなく愛していたのである。

このせんべいはとても軽い。
いわゆる煎餅と違って密度の薄いサクサクせんべいなのだ。
まあ、だから安いのかもしれない。
このサクサク感としょうゆ味が絶妙なマッチングを見せていたのである。

ところが、このせんべいにはライバルがいた。
『ソフト焼きサラダせんべい』という姉妹品があったのである。
どちらかというと、こっちの方が先にあったのかもしれない。
私が買いに行く売店にはスペースがなくて、どちらか一つしか棚に陳列出来なかった。
しかも、どうやら『サラダせんべい』が優勢らしく、『しょうゆせんべい』は陳列してないことが多かったのだ。

私はこの『しょうゆせんべい』を毎日食べていきたい!という思いから、何とか『しょうゆせんべい』を勝たせようと思った。
私が買うしかない!
私は『しょうゆせんべい』をダンボール1箱分注文するなどの荒技に挑んだ。
それでも、いっこうに『しょうゆせんべい』が陳列される気配はなかったので、なんで陳列してくれないのかきいてみたところ、答えは「あなたが全部買ってしまったから」だった。
空回りだった。

そうこうしているうちに、売り場が改装されて陳列棚が増えた。
『しょうゆ』と『サラダ』は両方とも陳列されることになったのである。
私の努力は無駄だったわけだが、私の戦いはまだ終わらなかった。
『しょうゆせんべい』のおいしさを世に広めよう。
その為には私一人が買っていてもダメだ。

そこで私は学生達に『しょうゆせんべい』を食べさせることにした。
私は毎日のように学生達に食わせた。
美味しいと思えば、奴らも自分で買うだろう。
しかし、彼らは決して買ってこようとはしなかった。
お前達はなぜ自分で買わないんだ!
その問いへの答えは、「買わなくても持ってきてくれるから」。
・・・・・。
世の中は思うようにならないものである。

そんな私の情熱も猛暑には勝てなかった。
暑いとさすがに塩気の多いものは食べたくなくなる。
この夏はあまり『しょうゆせんべい』を食べなかった。
たまに買うとせんべいは明らかに湿気っており、どうも全く売れなかったようである。

そして秋。
店頭から『ソフト焼きしょうゆせんべい』は姿を消した。
製品のラインナップが一新されたようである。
『サラダせんべい』には後継商品が出来たのだが、醤油味のソフトせんべいはつくってもらえなかったらしい。

こうして私は『ソフト焼きしょうゆせんべい』を食べることが出来なくなった。
大変残念なことである。
ただ、私はまずまず良く食ったな、という満足は持っているのだ。
本当によく食べた。
おそらく私は誰よりもたくさん『ソフト焼きしょうゆせんべい』を食べたに違いないのである。

さよなら、私の『ソフト焼きしょうゆせんべい』。


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