私はいま自分に失望している。 自分に失望するのは、十何年かぶりのことである。 かつての失望に辿り着くには、高校生の頃まで時間を遡らなければならない。 私は子供の頃から、自分は天才なのだと思っていた。 なぜならば、私は学校で習うことの全てを、習う前から知っていたのである。 塾に通っていたわけではない。 だが、学校から学ぶものなど何一つなかったのである。 私は当時クラスで1番!というような成績を取ったことはないが、全く何も勉強しなくても2〜5位ぐらいに常に位置していた。(ケアレスミスの多い子供だった。今もだが) 勉強しなくても答えがわかってしまうのだ。 これを天才と呼ばずしてなんと呼ぼう。 まっ、実を言えば、私には六つ上の兄がいて、彼がなにくれとなく私に教え込んでいたことが原因であったということに、後になって気付くのだ。 それが証拠に、中・高とレベルが進むにつれて化けの皮がはがれてくるのである。 もっとも、私は高校に進むまで、依然として自分は天才だと思っていた。 私は無理矢理、進学校に進んだ。 そんな私は高校一年の年度末試験ですごい点を取ることになる。 数学Iが13点だったのである。 実は採点ミスで23点なのだが、恥ずかしくて訂正に行くことも出来なかった。 おまけに私の答案用紙には、「まじめにやれ!」と採点者のコメントまでついていたのである。 さすがに勉強しようと思った。 だが反面、俺は天才だし、勉強したらぐんっと成績伸びるからねえ、とも思っていた。 私は高校一年の終わりから二年の終わりにかけて丸一年、生まれて初めてまじめに勉強したのだ。 ところが全く成績が伸びなかった。 正確に言えば、順位が、というべきか。 周りの奴らも頑張っているから、相対的な順位はなかなか上がらない。 勉強しても俺ってダメじゃん・・・。 私はその期に及んで、はじめて自分が天才でないことを知ったのだ。 それどころか、並以下というべきであったろう。 私は自分に失望し、それ以来勉強することを止めた。 実に自分に失望するのはそれ以来である。 頑張らなければ、自分に失望することもないのに。 人生とは、まことに以て理不尽なものだ。 しかしながら、頑張らなければ何も始まらない。 自分の目指すものに辿り着くことは出来ない。 だから、やるしかないんだ。 たとえ自分に失望する恐怖と闘いながらでも。 |