私は今回のラグビーワールドカップを一度も観ていない。 ワールドカップであろうが、オリンピックであろうが、その競技に対して普段払っているのと同程度の関心しか払わない、と私は心に決めているからである。 しかし、否が応でもラグビーの話は耳に入ってくる。 ラジオなんかを聴いていると、文字通り耳からラグビーの話が聞こえて来てしまうのだ。 俄ファンが増えているらしい、と。 こんな時だから私は書きたい。 日本でラグビーがメジャーになることはないであろう、と。 それは私が実際にやっていて、こんなに不公平なスポーツは流行るはずがないと思っていたからである。 ホントは日本代表がもう少し勝ち進んでから書こうと思っていたのだが、早々に負けてしまったので大会終了後のこのタイミングになった。 まず前提として、ラグビーもゲームの一種なので、私が普段ゲーム話で書いていることをそのまま適用出来る。 これは飲み込んでもらう必要がある。 人間は負荷を乗り越えることにより喜びを得ることが出来る。 しかし、ゲームが娯楽として嗜好されるには、単負荷当たりの喜びが他の娯楽より大きい必要があるのだ。 負荷を乗り越えたときに得られる喜びが大きくなるように設計されたゲームが人々に嗜好されるのである。 私はそれを「得をする」としばしば表現している。 では、ラグビーにおいて得をするとはなんなのか? ラグビーにおいて得をする行為とは、前向きの慣性があるプレイ、助走をつけたプレイをする事である。 スピードを持って敵に当たる、抜く、押す、それが楽しい。 逆に損をする行為は、止まった状態でボールをもらう、止まった状態で敵にぶつかられる、止まった状態で力仕事する、事だと言えるだろう。 この観点をポジションごとに当てはめてみれば、楽しいかどうかが分かる。 まずフロントロー(1・2・3番)。 ここはもう止まった状態で力仕事をするポジションである。 誰がどう見ても楽しくない。 私もやっていたから断言できる。 フッカー(2番)はやや事情が異なるが、ここでは触れない。 次にロック(4・5番)。 ここはフロントローに比べればややマシだが、やはりボールを獲得するために下働きをするポジションである。 ポイントが出来てから遅れて到着する事が多いため、スピードのあるプレイはあまり出来ない。 スクラムでスタミナを消耗する事も含めて、辛いことが多いポジションだろう。 ごく希にチーム事情で身体能力の高い人がやることもあるが、そんなことを言ったらどこのポジションでも同じ事なので、ここでは考慮しない。 話の都合上、フランカー(6・7番)は飛ばす。 ついで、ハーフ団(8・9・10番) ここは花形ポジションだが、実はシンドイ。 ボールを止まった状態でもらうことが多いからだ。 特にフォワードが弱いチームだと、下がりながらボールを受けることも多く、勢いよく敵に突っ込まれてしまうポジションである。 身体能力が高い人が担当するので、華やかに見えるだけ。 ここでまた話の都合上、センター(12・13番)は飛ばす。 意外なのがウイング(11・14番)。 トライゲッターのイメージがあり、花形かと思いきや、そうでもないらしい。 ボールに触る機会が少なく、キックケアで無駄走りが多いので、実はあまり人気が無い・・・らしい。 私からは遠いポジションなので、らしいとしか言いようがない。 ホントはセンターをやりたいのに、体が小さかったり、当たりが弱かったりでウイングに回されることが多いようである。 最後がフルバック(15番) ここはキック力が必要なので、スタンドオフ(10番)と能力的に被る事が多い。 しかし、攻撃参加する機会が少ないし、キック処理の責任が重大なので、出来れば10番をやりたいものなんだそうである。 つまり、シンドイはずの10番よりは楽しくないのであろう。 ここまで来て、説明を飛ばしたポジション。 それがラグビーにおいて得をするポジションである。 つまり、フランカーとセンター。 敵を潰しに行くフランカーと攻撃の起点となるセンター。 ここは敵に思いっきりぶつかっていけるからね。 ポイントが出来たときにも、最初に勢いをつけて突っ込むことが出来るポジション。 私自身はやったことはないが、ここは絶対に楽しいはず。 これには自信があるんだ。 ラグビー好きで好きでしょうがないっていう先輩2人がセンターとフランカーだったから。 そりゃ、あんたら楽しいだろって思ってたよ。 こう書き出してみれば、得をするポジションと損をするポジションのある事がご理解いただけるだろう。 それは面白い・面白くないに直結する。 だから、ラグビーは不満が溜まりやすいのだ 我々は「悲劇のヒーロー病」と呼んでいたけど、不満を溜め込んで爆発したりするのである。 他のスポーツよりキャプテンシーが重視されるのは、この不満をなだめなきゃならないからだろう。 キャプテンが誰よりも辛い思いをして、他のチームメイトが不満を言い出せないようにするのだ。 こんなスポーツを多くの人がやるだろうか? 楽しい人より楽しくない人の方が多いんだよ。 少なくとも、日本のような世界でも有数の娯楽天国でラグビーをやる人が沢山いるとは、私には思えない。 あくまでも、サッカーや野球をやらなかった人や脱落した人の中で、更に物好きのやるスポーツ。 今回のブームによって一時的に競技人口が増えても、長続きはしないだろうと私は思っている。 ちなみに、ラグビーのプロ化を推進している清宮副会長(日ハム・清宮の父)はフランカー出身のはず。 ラグビーが本質的に楽しいものだと思っているんじゃないかな。 メジャースポーツになってしかるべき、と。 しかし、観るのはともかく、プレイするのはまた違うはず。 競技人口が増えないスポーツを果たしてプロ化出来るものなのか。 相当難しいだろうと私は思うのだが・・・。 |