暖かくなってくると、植物が繁茂して困る。 実家を相続してからメンド臭くて仕方ない。 敷地からはみ出して伸びる枝を切り落としたり、庭に除草剤をまいたり、部屋を借りて住んでいた頃には考えられないような仕事が増えるのである。 4月も終わりぐらいになると蜂もぶんぶん飛び始めるし、夏は蚊が尋常じゃないし、庭仕事はホントにイヤだね。 コンクリートジャングルが恋しいよ。 庭仕事していると、うちの親、アホだなあ、といつも私は思う。 隣の敷地に極めて近いところに、それも近接して2本小さな木が植えられているのだ。 あんなところに植えたら、またいずれはみ出すがな。 なんであそこに植えたんだろう、無計画にもほどがある、と実家に戻って以来ずっと思っていた。 しかし最近になって、なるほどな、と思うようになった。 毎年固定資産税を払っているうちに、だんだん家が自分の所有物だという実感が湧いてきて、家が劣化するのを心配するようになったからだ。 ちょうど問題の木が植えられているところに、10年以上誰も住んでいない隣の家の雨水が流れ込んでくる。 お隣の家はなぜか2階の雨どいが途中でなくなっており、一階の屋根に雨水が落ちてきて、それが跳ね返ってうちの敷地に流れ込んでくるのだ。 それも大量に。 狭い敷地だから建て家までそう距離もない。 基礎がやられるんじゃないかと心配になるし、壁にも水しぶきがかかって傷みそうなのである。 きっとうちのおっかさんも気にしてたんだ。 でも、お隣さんと揉めたくないから、たぶん黙ってたんじゃないかな。 世間体を気にする人だったし。 おそらく気休めに木を植えたんだろう。 もう少し成長すれば、壁に掛かる水しぶきは遮ってくれそうである。 あそこに植えたくなる気持ちはわかるな。 ちなみに私は、その水しぶきが壁やガラスに跳んでくる正にその部屋で中学生の頃から寝起きしていた。 おそらく事情は今とさほど変わらなかっただろう。 しかし、一度もそれが問題だと思ったことがなかった。 家の心配などしたことがなかったのである。 やっぱり家が自分のものだと思うようになったから分かるんだろうな。 私は隣家とうちの塀の間にバスマットを挟むことにした。 塀から半分上に飛び出したバスマットで水跳ねを遮るのだ。 そして、そのバスマットを母が植えた木にくくりつけて固定した。 あんな木でもとりあえずは役に立ったな。 |