玄関のチャイムが鳴った。 私はアポイントがなければチャイムが鳴っても出ないことにしているのだが、やけにしつこく鳴らしてくる。 あまりに鬱陶しいので戸を開けてみると、そこには見覚えのある老人が立っていた。 ただいま絶賛新築中のお隣の土地を仲介した不動産屋である。 今度入ってくるお隣さんが挨拶しに来たときに、私が「いずれうちも取り壊すだろうから、(迷惑を掛けるのも)おあいこだね。」と言ったのを聞きつけて、早速営業に来たのだった。 しかし、いますぐに取り壊すつもりはない。 見たところ70歳に近いこの不動産屋が現役のうちにお世話になることはないんじゃないかな、きっと。 とはいえ、境界線の確認作業の時に多少面識ができちゃったので、そう邪険にすることも出来ず、私は世間話を強いられた。 この不動産屋が言うには、お隣のもう一つ隣の土地も既に買い手がついたそうである。 ついこの間、更地にしたばっかりなのに。 なんでも買ったのは若夫婦だとか。 よくよく聞いてみると、近頃我が家の周辺には若い人がたくさん入ってきているそうだ。 確かに周辺を歩いてみると、真新しい家が増えている。 小学校がすぐそこにあるのも子持ちには有り難いのかもしれない。 そういえば、今度入ってくるお隣さんも小さなお子さんを連れていた。 どうやら田舎は田舎で立地条件の良いところに人が集まってくる現象が確実に起きているようである。 私の読みどおり、売る気になれば土地は売れるみたいだ。 金融緩和の影響もあるのかな。 ただ、いいことばっかりじゃない。 近所のどこかでいつも工事をやってる。 二つ隣の土地も8月には着工するって言ってた。 壊すのに比べると建てるのはそれほど五月蠅くはないのだが、私ぐらいになると、家の前を大型トラックが通るだけで目が覚めてしまう。 工事が始まる時間は早くなくても、私は確実に睡眠不足になってしまうのだ。 スケジュール的には、隣の工事が終わった頃にまたその隣の工事始まる。 どうもしばらくは睡眠不足が続くらしい。 |