いきなりで申し訳ないのだが、私は黒田日銀総裁の主張は正しいと思っている。 現在のインフレは資源価格の急騰が主因であり、円安の影響は相対的に小さい。 更に円安の原因は主に米国の政策金利の上昇と、それを先取りした米国債金利の上昇にある。 日本の金利を少しぐらい上げたところで焼け石に水にであり、日本のインフレ率が高まってこなければ金融緩和を続ける、という主張は正しい。 問題は、オーバーシュートコミットメント(インフレ率が2%を安定的に超えてくるまで緩和続けるという市場との約束)を達成した後、金融緩和をやめられるかどうかだ。 国債の利払いを考えれば、おそらく止めることはできないだろう。 その時は今以上の円安圧力が発生し、国民生活はより苦しくなる。 米国のインフレ率が早く下がるのを祈る以外にない状態である。 2年物の米国債利回りが2.7%を超えている状態はすでにオーバーシュート領域であり、そのうち下がるであろうと私は思っているし、それにつれてドル円も下がるはずだ。 ところで、本当に書きたいことは別にある。 黒田総裁が財務金融委員会で発言した「家計が値上げを受け入れている」という表現がたたかれて、謝罪に追い込まれたそうだ。 マジかよ、と思って。 謝る必要なんかないのに。 叩いてる奴はアホだよ。 主語は「家計」だぜ、 消費者の気持なんか関係ない。 いやいやだろうが、数字の上で買っている様子が窺えることを「値上げを受け入れている」と表現したんだよ。 そんなことわかるだろ。 こんなことで叩くやつらがいることが信じられない。 最近の若い奴らは長い文章が読めないらしいから、半分ぐらいはホントにわかってないのかもしれないな。 でも、半分ぐらいは分かっててワザと怒ってるんじゃないか、と思うね。 たぶん、とにかく偉い人、身分の高そうな人を攻撃したくて、手ぐすねを引いて待ってるんだ。 私が読んだ限り、黒田総裁の意図を説明するような記事は見当たらないし、メディア側が煽っている感もあった。 まったくひどい世の中だ。 誤解を生じる可能性、それも聞く側が相当なアホであるという前提で誤解を生じる可能性を考えながら喋らないといけないなんて。 それもこれも、日本が貧しくなったからだろうな。 まさしく、貧すれば鈍する、だよ。 <後日談 2022_06_14> 2年物の米国債金利が3.4%まで来た。 こんなに短期間でここまで上がるとは思っていなかったな。 でも、政策金利が2%を超えれば景気が冷やされて、時間とともに金利は下がっていくし、ドル円も下がるという見立ては変えていない。 インフレ率は遅行指標なのに、市場が敏感に反応していることにむしろ驚く。 <後日談2 2022_10_20> 予想が完全に外れた。 米政策金利がピークをつける前に2年物の米国債金利が低下し始めて、今頃は円安も天井をつけているだろうと思っていた。 でも、私はそのうち円高方向に戻るとまだ思っている。 本来、インフレ率が高いということは通貨の価値が下がっているはずなんだから。 ドルは高すぎるし、そのうち必ず修正が入る。 ただし、そのタイミングがいつになるかは誰にもわからない。 |