「か」からわかる日本の風土

「か」からわかる日本の風土 2006_05_31

 

これもまたたまたまなのだが、言葉について考えているとき、私は蚊に悩まされていた。
なんか知らないけど、ぷーんと私の周りを飛んでいるのである。
私を狙っていることは明らかであった。

しかし、それは彼にとって大変不幸なことでもあった。
私は見つけた蚊を殺すまでとことん追いかける。
私の近くに寄ってきた時点で、お前はもう死んでいる!なのである。

捕まえてみると、よく見かける黒と白のシマシマの蚊であった。
調べたところによると、どうやら「ヒトスジシマカ」という種類らしい。
私はこの名前を見て、総称すると一文字なのに、個々の種類の名称は長いな、と思った。
検索をかけたところ、日本にいる蚊だけで100種類もいるそうで、分別するにはそれなりに長い名前が必要になることは、ま、当たり前である。

そこで私は逆のことを考えたのである。
「か」一音を蚊にあてるのは勿体ないんじゃないか?
漢字で書けば複雑な「蚊」であっても、言葉は音が先に出来たはずだから、もともとは「か」だったろう。
高々蚊に50個しかない音を割り振る必要があったのだろうか。

ちょっと情報理論的に考えてみると、会話に良く出てくる対象に短い符合を与えた方が効率的になりそうな気がする。
言葉ってのは必ずしも合理的に出来ているわけではないだろうけど、軽く50音それぞれについて考えてみた。

あ?  い井  う鵜  え絵  お尾
か蚊  き木  く?  け毛  こ子
さ?  し死  す巣  せ瀬  そ?
た田  ち地  つ津  て手  と戸
な名  に?  ぬ?  ね根  の野
は葉歯 ひ火陽 ふ?  へ屁  ほ帆
ま?  み?  む?  め目  も藻
や矢      ゆ湯      よ夜
ら?  り?  る?  れ?  ろ炉櫓
わ輪

思いつかない音には?が付けてある。
並べてみると、なるほど生活に密着した言葉が多い。
いにしえの日本人の暮らしぶりがわかりそうな気がする。
しかし、「か(蚊)」だけなんか変だ。
生活に必要でもなさそうである。

もしかすると、当時は今よりずっと蚊に悩まされていたのかもしれない。
温暖湿潤な日本の気候は蚊の繁殖にピッタリだ。
蚊の繁殖には水たまりが必要らしいのだが、昔はいっぱいあっただろう。
多雨で傾斜の少ない地域には悪水がそこら中に溜まる。
今よりずっとたくさんの蚊が昔は生息していたに違いない。

現代人が挨拶の中に天気の話を織り交ぜるように、昔の人は「昨日は蚊が多かったねえ」などと話した。
そんな想像も出来なくはないな。



<余談>
英語で蚊は「mosquito」である。
「dog」や「cat」に比べるとかなり重要度は低そうだ。
英語はTeutonic(ドイツ語系)とラテン系が混じってるから、どこで発生した単語なのか私は判断する能力を持たないけど。
寒い地方や乾燥した地方では重要度が低くなりそうな気はするな。


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