日本の現実

日本の現実 2021_02_02



1月中頃のことだったか、チャイムが鳴ったので玄関に出てみると、外国人らしき男性が立っていた。
隣の家を取り壊すことになったので、挨拶に来たのだそうだ。
うちの南隣に十数年放置されていた家があって、ご近所さんはみんな迷惑していたのだが、それをいよいよ取り壊すことになったというのである。
まあ、悪い話じゃない。
ただ、挨拶にやってきた外国人が置いていった名刺を見ると、「代表」という文字の後にアラブっぽいカタカナの名前が書かれており、その上に「日本×トルコ友好」と書かれているのが、ちょっと気になった。
会社は日本の建設会社の名前なのに、代表が外人、おそらくトルコ人なのか。
後日取り壊しの日程を書いた紙を持ってきます、と言い残して帰って行ったが、持ってこないまま一週間後に取り壊しは始まった。

いざ取り壊しが始まると、驚いたことに人足は全員外国人であった。
確認はしていないが、顔立ちからしてトルコ人なんだろう。
不安を感じたので、私は可能な限り彼らを見張ることにした。
すると案の定、防護シートを張るときにうちの物干し台に入ってくるのを確認した。
うちを守るための防護シートだから張ってもらわないと困るのだが、それでも他人の敷地に入る時は許可を取るべきだろ。
私はとび職らしき外人に向かって「入ってもいいけど、入るときは許可を取らないとダメだぞ」と諭した。
しかし、彼は怪訝な顔をしている。
どうも日本語が分からないようであった。
すると、少し離れていたところにいた別の人足が「ワタシ、ニホンゴワカリマス」と言って近寄ってきた。
彼曰く、この現場に日本人はいない、更に、今日は下準備だから責任者もいない、というのである。
全くもって、いよいよ不安は高まった。

しかし、仕事っぷりは特に悪くはなかった。
平らな部分がないポールだけの足場を伝って、重機で半分壊れた家の屋根に登って作業するなど、下手な日本人より身のこなしは良さそうだった。
重機の扱いが日本人より下手だというわけでもなさそうだし、別に外国人だからと言って何がどうというわけではないのだろう。
木曜日から始まって、日曜休みの月曜日まで、実質4日で取り壊しから整地まで終わらせてしまった。
あっけないものだ。
長年ご近所さんを悩ませてきたあの家が4日で消えるのか、という感慨は私にもあった。

後日、墓参りのついでに我が家を訪れた叔父さんから聞いたことには、叔父さんの家の隣を壊したのも外人さん達だったそうである。
もう今どき、取り壊し工事ぐらいだと日本人のとび職を雇えないのかもな。
人手不足が原因か、あるいはコストが高すぎるのか、恐らくはその両方。
決して日本人がいないわけじゃない。
イオンの宅配を頼むと配達人がいつも違うところからして、働き口を求めている人はいる。
だが、重機を操作したり、高所で作業できるような技能を持った人はいない、ということではないか。
宅配なんかより、ずっと高給が得られるはずなのにね。

これが日本の現実なんだよ。
外国人がいないと、どうにもならなくなっている。
彼らを排斥したところで困るのは日本人に他ならない、という現実が目の前にあるのだ。
それに気付くと、ちょっと心配にならなくもない。
近い将来、永住権とか選挙権を目的としたストやサボタージュが起きるかもしれないだろ。
彼らの立場が強くなれば当然。
その時、日本人にそれを撥ね付けることは出来るのかな?
今ですら出来ないのに、将来それが出来るとは、私には到底思えないのである。


戻る