東京に叔父さんがやってくるから一緒に飯を食おう、という話になった。 大人になると断れないのである。 大人になんかなりたくなかった。 本題とは全く関係ないのだが、私は子供の頃叔父さんが大嫌いだった。 叔父さんだけでなくお客さんの類が全て大嫌いだったのである。 なぜならば、服を着なければならなかったから。 私は家の中では常にパンツ一丁で暮らしており、ズボンを履かされるのが途轍もなくイヤだったのだ。 それはともかく、叔父さんと話していて、我ながら凄いことに気がついてしまった。 私は最近乞食を見たことがないのである。 私自身はお金に不自由したことはないけど、私の親の代まではそれなりに貧乏していたらしい。 しかし、今や叔父さんも立派に仕事を勤め上げて豊かな定年を迎えようとしている。 日本はこんなに豊かになったのに、いったい何の文句があるのか?という話をしていた。 私はニュースのインタビューに出てくる「物価が高くなった」などと文句をぬかすおばちゃんが大嫌いなのだ。 年金が少ないとか生活保護手当が少ないとか文句言うな!と私はいつも思う。 私は我慢強い人間が大好きなのである。 で、豊かになった証拠に乞食が居なくなったじゃないですか、と自分で言って気がついた。 そこら中にたくさんのホームレスが居る。 私も毎日のようにすれ違うのだが、彼らは乞食ではないのである。 乞食とホームレスは全然違う。 ホームレスは別に憐憫を乞うているわけではないのだ。 むしろバカにされたら怒るに違いない。 ただ単に家がないだけで、彼らは自分で食っているのだ。 賞味期限切れの食品を拾って食べるのは、誰かの許可をもらってやるワケじゃない。 雑誌を拾ってきて安く売るのも立派な商売である。 プライドまで捨てなくても食える時代になったということなんだろう。 これは如何に我々が豊かになったかという一つの証明である。 まあ、真っ当に給料もらっている人間と年金生活を開始する人間が、乞食とホームレスの違いを論じて豊かな時代を批判するなんざ下の下だけどね。 |