ほっかむり

ほっかむり 2010_02_04

 

寒い。
とにかく実家の冬は寒い。
東京より南にあるはずなのに、大体平均して5℃ぐらい気温が低いのである。
しかも、家の気密性が低いので、暖房を使わないでいると室温が外気と同じ温度になってしまう。
あまりの寒さに寒い話以外、書く気にならない。
しかしながら、そんな話を書いても誰も読みたくないだろうと思って、しばらく何も書かなかった。
でも、もう我慢できない。
私は寒い話を書く。

体のどこが寒いって、やはり体積あたりの表面積が広いところが寒い。
手足が胴体に比べて寒いのは道理にかなったことだ。
しかしもっと寒い部分があった。
耳である。
熱いモノを触ったときに耳たぶをつまむぐらいだから、放熱効果が高い部分であることは周知であろう。
こう薄っぺらな肉では体温を保つことは出来ない。
室温0℃に近いときなどは寒いを通り越して、耳が痛くなってくる。

今年1月に私の地元では珍しいほどの大雪になり、家に閉じ込められた。
あのときはマジで寒かった。
イヤーマフラーでも買いたいところだが、買いに行くことは出来なかったのである。
普段雪があまり降らない地域の人間は雪に極めて弱いのだ。

そこでタオルを頭から被って首の下で縛ってみた。
いわゆる「ほっかむり」というやつだ。
やってみたら耳がメチャメチャ暖かい。
ほっかむりって耳を守るためのモノだったんだと、はじめて知った。
てっきり、ひょっとこのお面を被るときにお面と顔の境を隠すためにやるモノだと思っていた。
それ以来私はずっと家の中でほっかむりをして暮らしているのである。

ところで、なぜほっかむりが暖かいのかというと、それは空気が動きにくいからである。
布一枚とはいえ、無いの比べれば空気は圧倒的に動かない。
動きさえしなければ空気は意外なほど断熱性能が高いのである。
近頃は良く聞く話だから、もはや意外でもなんでもないが。

なぜ「意外」であったかといえば、空気に断熱性があるようには普段感じられないからだろう。
空気は熱を持ったまま、どんどん拡散していく。
熱が伝わるのではなく、暖まった空気自体が動くのである。
ちょっと考えれば、気体のように密度の粗なものが熱を伝えることに不利であることは容易に想像がつく。
熱エネルギーが遷移するには物質と物質がくっついている方が有利だからな。

そんな理屈を知ってか知らずか、人間は昔からほっかむりをしてきた。
してきたんでしょう、見てきたワケじゃないけど。
きっと春先に田起こしをする農家の人達にとって、耳を覆う手ぬぐいは必須のアイテムだったに違いないと私は身にしみて理解するのである。


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