松井秀喜2

彼はゆく 2002_11_01

 

巨人の松井秀喜がFAでメジャーリーグを目指す。
今日発表があった。
遂にゆくか、彼は。
なんというか、寂しい限りである。

松井秀喜には私たちのヒーローになって欲しい、と私は思っていた。
私たちはヒーローを欲している。
何故か?
それは依存したいからだろうと私は想像している。
私たちは誰もが凄い人間にはなれない。
だから凄いヤツに依存して生きていきたいのだ。

だが、依存するには、依存される側に完璧が要求される。
プレイヤーとして優れているだけではダメで、少なくとも見かけは人間として尊敬できる人物でなくてはならないのだ、完全なる依存を実現するには。
私生活で浮ついた噂が流れたりするようではヒーローたり得ない。
インタビューを煙たがっているようではヒーローたり得ない。
自分をヒーローとして演出しなければならないのだ。
ヒーローになるためには自分をヒーローであると自覚する必要があるというのは、それが故である。
私が思うに、これがもっとも難しい。
長嶋茂雄氏も「『長嶋』やってるのも大変なんだよ」と漏らしていたそうである。(かなり適当な記憶)
難しい上に、この上なく辛いことのようだ。

私たちは、かつてヒーローになる資格を持ちながら、それを拒絶した人間を知っている。
『イチロー』こと鈴木一郎である。
彼は野球以外のことに煩わされるのがイヤで、ヒーローになることを拒んだ。
松井秀喜の他にもうヒーローたる資格を持ち続けている人間は、私の知る限り存在しない。
残念な話である。

だが一方では、松井秀喜がメジャーリーグへ行ったからといって、私達が落胆する必要はないとも言える。
メジャーリーグに行くことは、彼がヒーローであることを否定するものではない。
問題なのは、松井秀喜にヒーローであり続ける意志があるか、ということである。
今日のインタビューを見た印象としては、彼はヒーローであることを拒んでいないと私は思った。

彼は私たちのヒーローたり続けるだろう。
私は半ばすがるような思いで、そう予言したい。


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