ラグビー日本代表がウェールズに勝ったそうである。 特に何かが懸かっているわけではない強化試合だから、どれぐらい向こうが本気だったのか分からないが。 ニュースでは選手が抱き合って喜んでいるシーンが流され、「金星」と表現されていた。 金星! 前にも聞いたことがある言葉である。 そうだ、私はかつてとんだ過ちを犯したことがあった。 同じ過ちが繰り返されぬように、私は書き残しておかなければならない。 学生時代のある日のこと、部活のキャプテンでもあるY先輩が私の部屋を突然訪れた。 そしてビデオテープを取り出すと、見たこともないような笑顔で「これを是非使ってくれ」とだけ言い残して去って行った。 ビデオテープには「日本対アメリカ」と書かれていたが、そのことに全く私は頓着しなかった。 私はラグビー部に所属しているのに、ラグビーには全く興味がなかったのだ。 なんだろう? ビデオテープを買えないほどお金には困ってないけど・・・。 「使ってくれ」って言うんだから、まあ、観て消す用にでも使うか、と思った。 一週間ほどして、H先輩がやってきた。 「お前んとこにアメリカ戦のビデオあるんだろ?」と言われたが、私には何のことか分からない。 さあ、と首をひねる私に「Yがお前んとこにあるって言ってたぞ、アメリカに初金星を挙げた試合のビデオ」と彼は続けた。 あーアレね、と思うも時すでに遅し。 ビデオは別の番組に上書きされていた。 もう怒る怒る、H先輩。 そんなのあり得ないだろってね。 私には理解できないが、とても大事なビデオだったらしい。 しかし、私にだって言い分はある。 ちゃんと説明してくれないと分からないよ。 観て勉強しろってんなら、そう言ってくれないとね。 ラグビーやってるからって、みんながみんなラグビーのことばっかり考えているわけじゃないんだから。 もちろんそんな私の言い分は通るわけもなく、H先輩にグチグチと説教されるハメになったわけである。 今の世の中、ビデオテープはもう使ってないだろうけど、先輩がDVD-RWでも持って現れたら、いくらかはその中身にも注意した方が良いかもしれない。 如何に興味がないとしても。 まあ、そんなこと滅多にねえか。 |