ご飯はよく噛んで食べなきゃダメ! そんなことは言われなくても分かっている。 しかし、分かっているからといって、実践出来るかというとそうでもない。 今までは飲むように食べていた。 早食いかつ大食いである。 ところが、実際に自分で経験してみるとまた話は違う。 これからはよく噛んでゆっくり食べようと、私はいま心に誓っている。 胃の調子がおかしいことに気づいたのは3週間ほど前のことだった。 23時過ぎにテレビを見ながらスクワットしていたら、お腹からタプンタプン音がする。 夕食を食べてから4時間も経っているのに、全然消化されていないみたいだ。 何かオカシイとは思ったが、その時は全く気にしていなかった。 それからも普通に食事を取っていたが、次第に胃が張ってきて、携帯ゲーム機を俯せでプレイするのが苦痛になってきた。 一週間もすると、さすがにちょっとまずいだろと思いはじめる。 食事を消化のよいものにして量も減らし、市販の胃腸薬を飲んで様子を見てみることに。 だが、更に一週間経ってもよくならない。 私は怖くなって病院に行った。 町医者だと病気を見つけてもらえなさそうだから、大きな病院に。 とはいえ、大病院の医者だって神様じゃない。 問診と触診だけで分かるはずはないだろう。 私は胃カメラを飲ませてもらうことにした。 ところが、これが問題だった。 予約が埋まっているから、と5日後にされてしまったのである。 急患というわけでもないから無理は言えない。 私は5日間、不安な日々を過ごさなければならなかった。 5日間は長かった。 どんどん不安は増していく。 胃は日に日に張りを増していくし、吐き気はするし、ゲップがヤケに出るし、胃の周辺から下腹部に至るまで痛みを感じるようになってしまった。 これはまさかスキルス胃癌なのでは・・・。 若いと転移するスピードも速い。 どんどん胃の周りに拡がっているんじゃないか。 だんだんと思考がネガティブになってきて、胃カメラを飲む2日前ぐらいはもう確実にスキルス胃癌だ、と思うようになっていた。 末期だったら、精々余命半年だな。 そう思うと、どうしたらいいのか分からなくなった。 しかし、いよいよ前日になって、私は開き直った。 どうせ死ぬんなら、好きなものを食べよう、と思った。 食欲はあるんだ。 検査後、即入院なんてことになったら、もう好きなものは食べられない。 胃を全摘してもしばらくは生きられるだろうが、抗がん剤治療をやると、舌がやられて味覚が変わる。 たぶん、もう美味しい食事は取れないだろう。 いま喰うしかないと思ったのだ。 とりあえず食べたいものを少しずつ全部食べた、よく噛んで。 中でも味の素の冷凍具沢山チャーハンは旨かったな。 消化のことを考えて、奥歯ですりつぶすように食べると、味が口いっぱいに拡がってかつてないほどに旨かった。 なぜ自分はいままでよく噛んで食べなかったのかと後悔したぐらいである。 大体からして、一度に口に運ぶ量が多くても少なくても、感じる味はそう変わらないんだから、ウマイ物を早く喰うのはそもそも損なんだよな。 よく考えたら、スキルス胃癌でこんなにメシが旨いわけはない。 うちのおっかさんなんかは、癌が見つかる一ヶ月以上前からなんにも食べたくなかったそうだからな。 胃カメラの検査結果は全くの正常。 なんにも無し。 じゃあ、一体この胃の張りは何なんだって話なんだが。 とりあえず、まだしばらくは生きられそうだ。 これからはよく噛んでメシを食べよう。 これだけは実践していきたい。 |