またチャイムが鳴る。 でも私は出ない。 すると、しつこくチャイムを鳴らすこともなく帰っていた。 しかし、日をおいてまたチャイムが鳴る。 どうも同じ人が何度も来ているようだった。 一度応対しないといつまでも来そうだったので、やむを得ず私は玄関に出た。 すると、見たことのないおっさんが立っていた。 渡された名刺には、中部電力の下請け会社らしき名前が。 その人が言うには、お隣さんが電柱を動かしたいといっているのだそうだ。 うちとは反対側のお隣に近いが境界線上から少し内側に入ったところに立っている電柱を、うちと隣の境界線の延長上に持ってきたい、という。 しかし、許可をくれといわれて、果たして許可できるだろうか。 だって、私には何の得もないのである。 むしろ土地の価値が下がるかもしれないし、将来家を建て直すときに、レイアウトに制約がでるかもしれない。 断ると、まだ引っ越してもいないお隣さんといきなり険悪なムードになりそうな気もするが、だからといって自分に不利になることにわざわざ許可を出すわけにはいないだろ。 公権力によって決まったのであれば、文句は言わないにしても。 困った私は、その交渉人に「私にそれを許可する何らかの理由があるのだろうか?」と聞いていたみたところ、彼は「ありません。」と答えた。 「だったら、自分の方から許可は出来ないよね?」と問いかけると、「同じ立場だったら、私も同じ事を言うと思います。」と返してきた。 そう思うなら、最初から来るなよ!と私は思った。 結局、彼は「じゃあ、この件は無かったということで」と小さくつぶやいて帰って行った。 しかし、無かったことにはならないだろ。 こっちは断ってるんだから。 お隣さんに恨まれそうで、なんだかモヤモヤする。 気になって仕方ないので、検索を掛けてみると、電柱を動かすことに関する記述は山ほど見つかった。 どうやら電柱を動かしたいという話はよくあることのようである。 電柱を動かしたい場合は電力会社に掛け合えば、ごく普通に受け付けてくれるようだ。 費用は発生するようだが。 受け付けた電力会社は、公道上であっても動かす位置の前のお家に許可を取らなければならないらしい。 だからご近所と交渉はするのだが、大抵は許可を貰えないそうだ。 やむを得ないので電柱を細くしたり、動かしたい人の敷地に入れ込んだりして解決することが多いらしい。 そらそうだよな。 ちょっと安心した。 ひとつそういうもんだと思って、お隣さんには諦めてもらいたいものだ。 |