「王様の耳はロバの耳」という童話?がある。 まあ、たいてい誰でも知っているのではないか。 しかし、あれの結末はさて、どうだったのか? 私は全く覚えていないのだ。 仕方がないので検索をかけてみたところ、色んな結末があるんだそうで、結局よくわからない。 結末が変われば、そこから導き出される教訓も変わるわけで、これは困ったことである。 ある日のこと、仕事から帰ろうと自転車置き場で自転車の鍵をポケットから取り出そうとした私は、見え覚えのない鍵がポケットに入っているのを見つけた。 おやっ、と思ったのだが、すぐにその鍵がさっきまで使っていた会議室のプロジェクタ収納ボックスの鍵だ、と私は気付いた。 本当は帰ってしまいたかったのだが、致し方ない。 やむなく私は会議室に向かった。 すると、誰も使っていないはずの会議室に明かりが灯っているではないか。 電気消し忘れたのかな?と開けてみると、Aさんがいた。 食いかけの弁当を前にして、酷く驚いた様子であった。 なぜ夜の会議室で弁当を? 不審に思わないでもないが、鍵を返さないわけにはいかない。 私は事情を話して鍵を返却しに行った。 鍵はいつも収納ボックスに付けっぱなしなのだ。 しかし、な〜んか様子がおかしい。 Aさんの顔がやや赤らんでいて、お酒でも飲んでいるような感じだ。 しかも鍵を受け取ろうとするのである。 Aさんが鍵の面倒を見ているわけでもないに。 まるで私が近づくのを拒んでいるかのようであった。 目上のAさんにやらせるのも悪いと思ったので、私は自分で収納ボックスに近づいていった。 すると、収納ボックスの蔭に秘書のBさんがしゃがみ込んでいた。 何故収納ボックスの蔭に? 不審には思ったが、取り立てて聞くのもなんなので、鍵を元に戻して私は帰ることにした。 帰る私の背中では、二人がなにやらハッキリした声で相談しているようであった。 まるで私に聞かせるように。 帰りの道々自転車に乗りながら、なぜBさんが収納ボックスの陰に隠れていたのかを私は考えていた。 そうすると、急に逢い引きでもしてたのかな、という疑惑が首をもたげてきたのである。 特別変なことをしていたわけではないが、収納ボックスの蔭にBさんが隠れていたのはおかしいよな。 Aさんの態度も怪しい。 年齢的には親子ほども離れているのだが、ないとは言えないのだ。 私なんか50で18を提唱してるぐらいだからね。 また間の悪いことだ、と思った。 一方で、これ、誰かに言いてえ!!とも思った。 すげぇ言いてぇ。 これはたまらんわ。 穴を掘って、「王様の耳はロバの耳!」と叫ばずにはいられなかった床屋の気持ちもわかろうというものである。 で、私は物語の結末が気になっていたのである。 床屋は処刑されたのか、許されたのか。 いや、まあ、どっちにして誰にも言わないけどね。 口の軽い人間もちょっとどうかとは思うし。 だから、この話にはイニシャルすらも書けないのである。 |