資産に課税する勇気がないならば

資産に課税する勇気がないならば 2011_06_03

 

父親が死んで、相続を考えなければならなかった。
母親の時より額が大きくなりそうだから、ひょっとしたら相続税を払う必要があるかもしれないと思ったのである。
実際には杞憂だったのだが。

しかしまた、調べてみると相続税って大抵の人が払わないで済んじゃうことに驚く。
現行制度だと基礎控除5000万もあるからね。
更に「1000万×法定相続人」も加算される。
しかも、自宅の土地は一定の条件を満たすと8割が非課税になるというおまけ付き。
普通のサラリーマン家庭だと大抵は非課税枠に収まってしまうだろう。
相続税を払っている人って全体の4%ぐらいしかいなくて、年間80兆円の相続に対して1兆数千億円しか税収がないというのも、もっともな話である。
本来ならばとっくに済んでいるはずの税制改正では基礎控除が3000万になるらしいけど、もっと下げてもいいぐらいだ。
たとえ最低税率1%でもいいから、広く課税した方がいい。
というのも、本来は資産に対してもっと課税すべきだと私が考えているからである。

いま現在、日本の借金が凄いことになっているけれども、日本の国際収支はずっと黒字である。
別に日本からお金が出て行ったわけじゃない。
ということは、少なくとも国の借金分は回り回って誰かの資産になっているはずだ。
これから若い世代は割損を喰うという話になってるんだから、既に稼いだ人から税を取り立てるべきなんじゃないか。
足りない分をこれからの稼ぎに課税するのはオカシイでしょ。
実際にやるのは難しいんだろうけど。
選挙に行く人の多くは年配だから政治家は動きにくいし、技術的にも困難かもしれない。
日本から資金が海外へ逃げて行くだろうし、タンス預金されたら追跡しようがない。

ところが、ひとつ良い手がある。
通貨の希薄化だ。
例えば通貨を1%希薄化してその分を国庫に回すと、あらゆる資産に1%の税金をかけたのと同じことになる、大雑把に言えば。
消費税は使った人にだけかかるため、稼いでいるのに溜め込んでしまう経済的にはタチの悪い人間に有利な税制だけど、希薄化なら一律すっぱり公平に税金を取ることが出来るはずである。
いま、国債の日銀直接引き受けをやる・やらないでちょっとした論争になってるけど、一回やってみればいいのにな、と素人考えで私は思うのだ。
みんな貧しくなっても、仕事がある方がイイんでしょ?
希薄化して円安になったら万々歳じゃん!
折角大量の米ドル持ってるんだから、極端に円安になったら介入すればいいじゃない。
だいたいからして日本人って300兆円にものぼる外貨資産持ってるんだから、みんな喜んで円転するよ。
誰にとっても凄くハッピーに思えるのだが・・・。

もっとも、ほぼ全ての経済アナリストは希薄化に反対する。
まあ、普通はそうだよな、と我ながら思う。
通貨の希薄化って、昔でいえば金貨の質を落とすようなもんだからな。
いかにも国家終焉の始まりという感じはする。
だったら勇気出して課税しろよって話だよね。
資産に対する課税か通貨の希薄化か、どっちかはやれよ。
どっちもやらないんじゃ話にならない。


戻る