ハゲはとってもデリケート

ハゲはとってもデリケート 2006_01_17

 

常日頃から、いつか自分はハゲる、と思うようにしている。
家系的に絶対ハゲそうなのだが、本当にハゲたらとても正気ではいられない。
私は自分の弱さを知っている。
だから、いつかハゲる、きっとハゲる、絶対ハゲる、と日夜自分に言いきかせることによってショックを和らげようとしているのだ。
逆に、ハゲるハゲると思っていればこそ、「ああ、良かった、まだまだフサフサだ」と鏡を見る度に喜びを得ることも出来るのだが。

ところが、どうも最近洗面所の鏡をみると、ハゲ度が進行しているような気がして仕方ない。
頭の直上から光が照らすので、分け目のところが酷く手薄に感じるのである。
「ディフェンダー薄すぎ!
もうちょっとサイドからフォローしないと!!」
などと思ったりしていた。
たぶん気のせいだと思うのだが、気にし始めると際限なく気になるものである。

そんな敏感な毎日を過ごしていたある日のこと、私は新しい床屋さんへ行った。
私は床屋さんにあれやこれや言うのが嫌いのなので、適当にやってもらうことにしている。
ただ、今回ばかりは少し注意が必要だった。
あまり分け目をキッチリつけて欲しくなかったのである。
微妙なお年頃だからこれは致し方ない。
分け目をきっちり作り始めたら止めてもらおうと、私は注意深く見守っていたのだ。

すると案の定、床屋さんは仕上げに分け目を作り始めた。
そろそろ止めてくれって言おうかな、と思っていたところ、彼はとんでもない行動を取ったのである。
動かしていた櫛を止めて、少し思案した顔で、彼は分け目を消したのである。

「薄いのか!?」
咄嗟に思った。
聞いてみたいけど、そんなこと怖くて聞けないじゃないか。
私は分け目のない頭で自宅に戻ってきたのである。

それ以来ますます髪が気になってきた。
ハゲてる?
ハゲてない?
そんな不毛な問いかけを日々繰り返すことになったのである。

全くあの床屋め、余計な事しやがって!、などと毒づいてみたいのだが、彼は彼でこう主張するかもしれないな。
「私は最善を尽くしました」って。


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