面倒なことになった

面倒なことになった 2009_06_19

 

こんな事を考えることがある。

地球の人類よりも圧倒的に文明の進んだ宇宙人がやってきて、私を差し出せ、と人類に要求してきた。
おとなしく差し出せばよし、さもなくば全人類抹殺だ!!と言い出したのである。
なんだかわからないが、奴らメチャメチャ怒ってる。
お忍びで地球にやってきて蟻に化けていた宇宙人の王子様を、どうやら私が踏んづけてしまったらしい。

地球の文明では戦っても絶対に勝てないことは分かっている。
たった一人のために全人類が抹殺されるのは困るから、まあ、きっと私は助けて貰えないだろう。
しかし、そこは似非ヒューマニズムもあるので、時間に猶予があるうちは差し出されないかもしれない。
きっと、自発的に行って欲しいなーみたいな雰囲気になるのではないか。

だが、私は死ぬのは絶対にイヤである。
たとえ全人類が死ぬことになったとしても、一秒でも長く生きられるのであれば私は逃げる。
といってもどこへ逃げたらいいのか。
最後ぐらい実家へ帰った方が良いのかもしれない。
仮に実家に逃げ帰ったら、親はかくまってくれるだろうか。
私のイメージだと「世間体があるから、あんた悪いけど死んでくれんかね」と母に言われそうな気がするが、さてどうだろう。
親父は「死んでくれ」とは言えずに黙っている様な気がするな。
既に母は亡く、親父は惚けちゃってるから、想像に想像を重ねるより他にないが。
やはり実家にはいられないから、富士の樹海にでも逃げるか。
とはいえ、富士の樹海で迷って死んじゃうのも困る。
弱った・・・・。

と、こんな事を日夜考えるぐらい私は死にたくないのである。
とにかく絶対にイヤ。
断る!

なんでいきなりこんな話から入ったかというと、臓器移植法改正案が衆議院を通過したからである。
これは困った。
法案の詳細はどうでもイイのだが、今までは本人の意志表示がなければ出来なかったことが、本人の拒絶の意思表示がなければ出来るようになったことが困ったことなのである。

私は法案の内容以前に、現在の臓器移植プロセスに納得していない。
だって、プロセスに関わる人達、みんな移植したい人達ばっかりなんだもん。
医者は他に救える命があるなら臓器移植したいと思うだろうし、移植コーディネーター?とやらもホントに中立かどうか疑わしい。
そもそも移植したい立場じゃなかったら、そんな仕事に就かないだろ、おそらく。
どっちかと言えば、移植したい側の人間であるはずである。
最後の砦、ドナーの家族だって、専門家に説得されたら折れちゃう可能性高いでしょ。
場合によっちゃ、植物人間で多額の治療費がかかりますよ、なんてこともあるだろうし。
ひょっとしたら、家族も脳死移植を喜んで認めちゃうかも。
ドナーである私のことをどうしても生かしたい、という人が現在のプロセスには一人もいないのである。

更に外科医には信用できないところもある。
医者ってのは臨床医であると同時に学者でもあって、論文を書くためのサンプルを欲しているのだ。
外科医の場合、移植手術は論文が書きやすいんで、もう移植手術がやりたくてやりたくて仕方ない、という連中もいると聞いた。
ずいぶん昔に聞いた話なので、今は違うかもしれないが。
米ドラマの「ER(緊急救命室)」なんか見てても、難しい手術が回ってくると外科のレジデント(研修医)は嬉しそうだもんな。

私はそんな連中に自分の命をゆだねるのはイヤだ。
少なくとも、脳死からの臓器移植に対して懐疑的な立場の専門家がプロセスの中に入ってなかったら、絶対に断る。
で、断るためにはその意思表示がこれからは必要になった、というわけである。
誠にメンド臭いことになった。

何よりメンド臭いのは、自分が脳死からの臓器移植に反対である、ということの正当性を主張する必要があることである。
ただ拒否するだけじゃ、ケツの穴ちいせえな、って感じでしょ。
顔真っ赤にして説明しなきゃならない。
私もそれを説明するのに、こんなにたくさん書かなければならなかったわけである。


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