いま激しい怒りの中で

いま激しい怒りの中で '99_06_07

 

苦しい。
胃が痛い。
もどしてしまいそうだ。

いま私は激しい怒りの中にいる。
そしてその怒りから抜け出せないでいる。
文章にすることで、ここから抜け出すことが出来るだろうか?

金曜日、職場の飲み会があった。
その後職場の先輩にあたる男に、朝まで飲みにつれ回され、さんざんからまれた。
いや、からまれたという表現は適当でないかもしれない。
不当になじられた、もしくは、個の尊厳を傷つけられた、というべきだろうか。

私はとにかく解放されたかった。
酔いはさほど酷くなかったが、酔っぱらい相手に議論したくなかったので、適当に
『ああ』・『はい』などと相づちを打って夜が明けるのを待った。
私は反論すべきだったかもしれない。
しかしそれは出来ないことなのだ。
私はわき上がる怒りを抑えるしかなかった。
ああ、どれほど朝日が恋しかったことだろう!

解放されたあと、私は自分の部屋に戻るとすぐに眠りについた。
よほど疲れていたのだろう。
しかし、目が覚めてからも、怒りが消えることはなかった。

彼の言葉の一つ一つが思い出されるたびに、腑が煮えくり返る。
なぜ、私は耐えなければならなかったのか!!
答えは簡単だ。
仕事を辞める勇気がないから。
怒りを爆発させてしまってからの人間関係を考えると、どうしても出来なかった。
職場の特殊性からして、そうなった場合、彼か私かのどちらかが辞めなければなら
ない。
私には勇気がなかった!

土曜日曜と心楽しくない日々が続く。
「私はここにいつまでもいるつもりはありません」、「あと十年(彼の定年)あな
たと一緒にはやっていけません」、「あなたが生きるために見つけたリーゾンデー
トルを私に押しつけないでくれ。自分のは自分で見つける!」、彼に言ってやりた
い言葉が次々と涌いてくる。
しかしながら、それを言うことはやはり出来ないのだ。

月曜日ははたしてやってきた。
苛立ちから眠りは浅く短かったが、けだるい体を引きずって職場へ向かった。
必然彼に会う。
私は努めて平静を装った。
しかし、この体からは怒りがあふれ出していた。
どうやら周囲にも感づかれていたようだ。

私の体は怒りで震えていた。
落ち着こうと深呼吸ばかりしていた。
言葉を発すると、怒りが口からこぼれ出しそうで、彼の前では言葉を控えた。
怒りはいっこうに収まる気配もなかった。
増殖するガン細胞のように、もはや手のつけられない物になっていたのだ。

しかし、私は気づかなければならなかった。
自分が怒ろうとして怒っていることに。
もはや、その言葉の一つ一つに腹を立てているのではなかったのだ。

この怒りは誰に向けられるべきなのか?
酒を飲んでは絡み回る哀れな男に対してであろうはずはない。
あってはならないのだ。

だから、いまも私は激しい怒りの中にいる。
容易には抜け出せない。
今宵、安らかな眠りは私に訪れるだろうか?


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