琴錦が好きだ。 私はコトニーと呼んでいる。 いま彼は優勝争いのトップを走っている。 13日目の貴乃花戦はすばらしい一戦だった。 普段は決して盛り上がることのない食堂でも、歓声が沸き上がった。 琴錦が好きだというと、大抵「どうして?」と聞かれる。 さて、どうしてなのか? 好きなものに理由などあるのだろうか? 私はよくこう答える。 「彼は近代デブ史上初、二股をかけたデブとして、デブの期待を一身に集めているのだよ。いわばデブ界のプリンス!!」 しかし、それは本心ではない。 そんなわけあるはずがない。 彼はいつも一生懸命だ。 それに自力もある。 だが、いつも自分から負ける。 いいところまで押し込んでおいて、自分から倒れる。 人によっては、ばたばたして鬱陶しいと思うらしい。 私はそんなコトニーの相撲が好きだ。 ひょっとすると、手に入れかけた優勝を、いつものでんで逃してしまうかもしれない。 それでもいいと思う。 私は声援を送りたい。 |