彼は必ずそこにいる。 夕方の秋葉原、あるいは夕方だけではないのかもしれない。 秋葉原の目抜き通りに面する、ソフマップシカゴとセガの間に露店(といっても単なるガラスケース)を出している男がいる。 そのガラスケースの中には、金色の輝きを放つネックレス類が入っている。 そして彼はマイクを片手に、毎週、あるいは毎日、あるいは数十分おきに叫ぶのだ。 「只今から後片付けしますので、このケースに入っているもの、ぜ〜んぶ千円! 千円で持っていって下さい。 これは良いけど、これはイヤ、なんていわないで。 普段だったら千円、二千円じゃ買えないんだからね。 さあ、もう帰っちゃうから早くして!」 秋葉原はオタクの街である。 足繁く通う人の多くは彼のことを知っている。 しかしながら、電気街としても知られるこの街を、初めて訪れる人も少なくはないのであろう。 大繁盛というほどではないが、いつも幾人かは足を止めている。 どう考えても怪しい。 あれだけ頻繁に捨て値で売りに来るはずがない。 絶対に千円で売ってもボロ儲け出来るような代物なのだ。 彼とお客を見る度、私はこう言いたくなる。 「あなた、毎週同じ事言ってますよね」 私と同じ気持ちを抱いている人は少なくないはず。 きっと拍手喝采を受けることは間違いありません。 誰かチャレンジしてみませんか? |