98_09_12

必ずいる男 '98_09_12

            

彼は必ずそこにいる。
夕方の秋葉原、あるいは夕方だけではないのかもしれない。

秋葉原の目抜き通りに面する、ソフマップシカゴとセガの間に露店(といっても単なるガラスケース)を出している男がいる。
そのガラスケースの中には、金色の輝きを放つネックレス類が入っている。
そして彼はマイクを片手に、毎週、あるいは毎日、あるいは数十分おきに叫ぶのだ。
「只今から後片付けしますので、このケースに入っているもの、ぜ〜んぶ千円!
 千円で持っていって下さい。
 これは良いけど、これはイヤ、なんていわないで。
 普段だったら千円、二千円じゃ買えないんだからね。
 さあ、もう帰っちゃうから早くして!」

秋葉原はオタクの街である。
足繁く通う人の多くは彼のことを知っている。
しかしながら、電気街としても知られるこの街を、初めて訪れる人も少なくはないのであろう。
大繁盛というほどではないが、いつも幾人かは足を止めている。

どう考えても怪しい。
あれだけ頻繁に捨て値で売りに来るはずがない。
絶対に千円で売ってもボロ儲け出来るような代物なのだ。

彼とお客を見る度、私はこう言いたくなる。
「あなた、毎週同じ事言ってますよね」
私と同じ気持ちを抱いている人は少なくないはず。
きっと拍手喝采を受けることは間違いありません。

誰かチャレンジしてみませんか?


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