'96,8月ころ放送 ドリアン助川の正義のラジオジャンベルジャン


白血病と闘ったかよちゃんの日記




当時は仙台でニッポン放送を聞いていたのでところどころ聞き取れない部分がありました。
空白の部分があります。あらかじめお断りしておきます。
(・・・連絡がありまして彼女が実は初めてこの番組に電話をかけてきてくれたころから、えー、亡く
なる前の日の6月29日までほとんど毎日かかさず僕に宛てた日記を書いていたことがわかりました。
その日記はもちろんこの番組を聞いているリスナーのみなさんへのメッセージもたくさん含まれて
います。
今夜は過去8ヶ月間のかよちゃんの声、まあ、時間の都合上会話の一部はカットはしてありますけ
れども、できるだけたくさんの彼女の声を聞いてもらいたいと思います。
そして何よりも、かよちゃんのつづった日記、これを皆さんに向けて読み上げたいと思います。
今ラジオを聞いている皆さん、かよちゃんへのメッセージ、この番組に届けてください。
受け付け電話番号は東京03−3211−3299
FAX番号は東京03−3211−0707
かよちゃんへのメッセージまってます。


(CM)

僕が初めてこのスタジオのマイクの前に座った日でもありました。ええ、かよちゃんとの出会いで
もあった日です。10月14日、去年の10月14日の彼女の声から聞いてください。

ドリアン:「もしもし」

かよ:「もしもし」

ドリアン:「お名前は?」

かよ:「かよこです」

ドリアン:「おいくつ?」

かよ:「えーと18です」

ドリアン:「18歳、高校生かな?」

かよ:「はい、高校3年生です。」

ドリアン:「なんか悩みかな?」

かよ:「うん」

ドリアン:「どうした?」

かよ:「うーんとね、病気なんですけど」

ドリアン:「病気?」

かよ:「うーん、ばくぜんとしたこといっちゃたな。今年のうーんと、初めからなんか調子が
       悪くって」

ドリアン:「はい」

かよ:「風邪ひいたかなと思ってはいたんですよ。で、一応風邪ひいたかなと思って病院行っ
       てで、なんか貧血みたいに言われて、んで、あの、診察受けて血液検査みたいのやっ
       て、その後また検査結果聞きにいって、で、同時に薬も飲んでたんで、あの、良くな
       っていっていたんですけどそのあと……はよくなったから元気なつもりだったん
      だけど一度なんかしっかり検査した方がいいとかいわれて入院勧められたんですけど
      納得いかなくて、自分は元気だったんで。でー、いやがってたんですよ、病院行くの
      もいやだったし。


     でー、なんだけど、親とかも兄弟とかもいるんですけど、みーんながなんていうの
     かな、あのー、検査勧める、入院を勧めてきたんで、なんでそんなにみんな過剰にな
     っているのかよくわからなくて、で、いつだったかな、先月のときに、お姉ちゃんの
     日記をたまたま見ちゃいまして、で、うちのお姉ちゃんは看護婦をやっ
     ているんですよ。
     で、日記見ちゃったときにわたしのことがたまたま書いてあってそれが、あのー、
     白血病って書いてあったんですよ。
     でー、がー、とかなっちゃって、で、どうしようと思っても何にもできないし、
     体調はそんなに悪くないので、今ちょっと風邪をひいているんですけど、悪くないの
     で、ただ、もう、家族はみんな知ってるみたいで、当然私だけが知らない状況で今も
     入院とかすすめられたりしているんですけど、あいかわらず拒否してて、」

ドリアン:「あの、ちょっと待って。お姉ちゃんの日記を見て、それから、自分が白血病であると
           わかったと君は言ったけれども、それから、あの、つまり、お父さんやお母さんに確か
           めてみた?」

かよ:「しないです」

ドリアン:「おねえさんにも?」

かよ:「はい」

ドリアン:「たしかめてない?」

かよ:「はい」

ドリアン:「じゃ、そのノートのなかから自分は白血病だと思っているわけね」

かよ:「はい」

ドリアン:「ははははー、で、お姉ちゃんが看護婦だからある程度確実かなと、今思っている」

かよ:「うん」

ドリアン:「なぜまだ確かめてないのかな?」

かよ:「うーん、直接的なのがこわいからかな、要は」

ドリアン:「こわいよなそりゃ」

かよ:「うん、うふふ」

ドリアン:「現代の病気の中でも重い病気に属するもんね」

かよ:「うん、そうですね、だいぶ調べましたけど、骨髄移植しないとだめとかね」

ドリアン:「まずはね、まず君が今、一番最初にやらなきゃいけないことは、あの、君は確実だと思
           っているかもしれないけど、お父さんやお母さんに私の病気は何だということを一度たず
           ねてはっきりさせた方がいいとおもうんだよね。」

かよ:「うーん、たぶん、たずねようかなと思ったときもあるんだけど、結局はたずねなかった
        というのが一つなんですけど、あとは、たずねちゃって、親はどうするのかなって思った
        ことが一つですかね。
        わたしはもうわかっているから、今、自分の中では考えていることがあるから、親の顔
        見てもまあこの先やって行けるかなあと思うんですけど、親が結局多分、私のことをいろ
        いろ考えて、家族中が黙っていると思うから」

ドリアン:「そうかなー、うーん」

かよ:「だから、私が知っちゃったというのを親としてから見ればどうなのかなっていうのはあ
        りますよね。母親が最近なんか、崩れかけてきたというか、なくことが多いんですね。
       隠れてですけどね。
       お風呂場だったり、洗面所だったり、ちらちらみることがあって、ああわたしのことなん
       だろうなと、おもってはいるんですけど、だから、確認できないところもあるのかなとは
       思うんですけど。」

ドリアン:「そういう時期はね、やっぱりあると思う。でも、いつまでも泣いてばかりじゃ・・・という
           ことに気付く時期もくると思うのね、」

かよ:「んー」

ドリアン:「今好きな人いる?」

かよ:「はい」

ドリアン:「いる、あの、お互いの想いを知ってる」

かよ:「はい」

ドリアン:「あ、そう」

かよ:「相談してないですよ」

ドリアン:「相談してない。18歳だよね」

かよ:「はい」

ドリアン:「つらいときもいっぱいあるけど、これから20代、30代と生きてく中でね、生きてて
           よかったって思う夜も絶対あるの。」

かよ:「はい」

ドリアン:「今恐いかもしれないけれど、あの、何よりもその治療という闘いをスタートさせないと。
            生きててよかったって夜は絶対来るから君にも」

かよ:「はい」

ドリアン:「うん、そんなにそんなにね、そんなに楽しい夜はないんだよ、実は」

かよ:「うふふ」

ドリアン:「でもハンデを背負いながらでも、一生懸命ね、生きると絶対にそういう夜が来るから。
            いま1つ勇気をだして一歩前進してほしいな。」

かよ:「はい。できるかぎり。」

ドリアン:「心の底から応援してます」

かよ:「ありがとうございます」

ドリアン:「またなんかわかったら電話してちょうだい」

かよ:「はい」

ドリアン:「それじゃあね、どうもありがとう。」

かよ:「失礼します」

ドリアン:「はい」
これがかよちゃんと僕が、そして皆さんがはじめてであった日の会話です。日記もこのころから始
まっています。全部で3冊のノートに書かれた日記、一番最初の部分を紹介します。


「なんであんなこといったんだろう。知らない人だからいえたのかな。ドリアンだっけ。いったいど
んな人なんだろう。ひくいこえの男の人は結構好きだな。かよの話し聞いてどう思ったろう。きっと
30分後には、げらげら笑っちゃってかよのことなんか」これっぽっちも覚えていないんだよね。
だってあの人は仕事でやってんだもんね。ああ、訳も分かんない人にこんな大事な話して失敗したなあ。

ラジオの人からその後どうなりましたかって電話があった。どうなったってどうもなんないよ。
ぼろぼろの人生だ。再生不良性貧血なんだって。
もしかすると白血病になってしまうこともあるらしい。何だ、ただの貧血じゃんって思ってたのに、
どうやらもうちょっと大きな問題らしい。泣かしちゃったよお母さんのこと。ごめんね。
でも、やっぱりかよ自身のことだから、うやむやにされてるのがいやなの、
だから、はっきりしたことがよくわかってかよ自身はさっぱりしているのかもしれない。
でもお母さんは違うよね。きっとかよよりつらいんだろうな。本当にかよは親不孝ものだ。

ラジオの人心配して電話くれたのかな。なんか興味本位の気がする。なんかかよのこと楽しんでる
ような気がする。だからマスコミの人って嫌い。どこまでが本当なのか分かんないよ。おねがいだから
ほっといて、今はぐっすり眠りたい。」


これが3冊にわたる彼女の日記の書き出しです。

(続く)