4.尾道ラーメン

翌朝は6時半起床。晴れ。恒例に従い流れに向かいルアーを振り込むが何の反応もない。早々に切り上げテントサイトに戻る。目覚めたコタカハさんはおもむろにコーヒー豆を引きはじめる。これがカッコイイ。次回は私も真似してみよう。
続いて見慣れぬ調理器具を取り出したコタカハさん。トーストにハム、チーズ、野菜、トマトなどを挟み込み、見事に焼きあげた。美味い! これは絶対に真似できそうにないので、毎回ご馳走になることにしよう。

朝食後はすぐに活動に移る。本日の目的地を三和大橋と定め、車の移動を開始する。カヌーを準備するくぼっちを残し車2台で出発。途中、高台に車を止め川を見下ろす。美しく拡がる川原に我々のキャンプ地が見える。スターンズ艇をセッティング中のくぼっちの姿もある。

   

再びキャンプ地に戻り、昼食の準備に取り掛かる。時刻はまだ10時半だが、カヌーに積み込む荷物を少なくするため、そしてなにより、おいしく調理をするためには、早めしが一番だ。お昼のメニューは尾道ラーメン。これまたコタカハさん自慢の一品だ。とってもおいしく出来上がった。

 

5.飛び込め

11時半、いよいよスタート。快調に滑り出したコタカハさん、くぼっちを尻目に、私はのんびりを決め込む。というのも、老艇フェザークラフト号は過去の冒険における損傷著しく、艇内におびただしい量の水が浸入し、お尻の下まですぐにたまってしまうのだ。人一人余計に乗っている感覚。重い水舟、昨日は必死で漕いだのだから今日はいいでしょう。のんびり、のんびり。そもそもこれが私のスタイル。

  

この日は天気もよく、ジェット船が頻繁に行き交う。あまりに立て続けにやってくるので、瀬のうえでしばし立ち往生。一つ行ったかと思うとまた次の赤い旗が見えてくる。
「まっいいか。あわてることはない。今日はのんびりいこう」

ジェット船が通り過ぎるとき、高い波がたつので、安全確保のため、カヌーを停止させ、川の中央を向く。するとジェット船の窓から景色を楽しむ乗客と正面から向かい合うことになり、否応なしに目が合ってしまう。じっとしていると何だか気まずくなるので、ここ一番、満面の笑みを浮かべ、両手でパドルを高々とかかげアピール。私の気持ちをしっかり受け止めてくれて、身を大きく乗り出し手を振ってくれる人もあり、とってもいい気持ちになる。

 

そうこうしているうちに、二人からだいぶ遅れをとってしまった。しばしまじめにパドリング。やがて私の到着を待ちわびる二人の姿を発見。左岸に上陸して、こちらをじっと見つめている。漕ぎ進んでいると、岸に立っているはずの二人が、不意に川の中に立っているように見えてきた。きらめく水面と川原の白い石の境目がだんだんわからなくなる。なんとも不思議な感覚だ。

 

ひとつのメロディーが頭をよぎる。野田知佑さんのハモニカライブで聴いた、野木啓太さんの「吉野川」という曲だ。リンクから聴いてみて下さい!
        ♪ああ、みつめていると、空か川かわからなくなる

再スタートしてしばらくは、くぼっちと並走。
「沈しないためにはどうすればよいか」、「釣り人がいたらどのルートを進めば良いか」
探究心旺盛なくぼっちから質問が浴びせられる。
「適当よ。良いと思うところを行けばよい」聞いた相手が悪かったようだ。
 

小腹がすいてきたので左岸に上陸、しばし休憩、おやつタイム。腰をおろしてむしゃむしゃやっているとき、川にせり出した大きな岩に目がとまる。こんな景色どっかでみたような・・・そうだ、気田川! 気がついたとき私は岩の上に立っていた。
「いっきまーす」
頭からザブーン。今回は泳ぐつもりはなかったのですが、またやってしまった。

動画にリンクします。
お忙しい方は
ご遠慮ください!

 

6.のんびり、うとうと 究極のツーリング

ゆっくりとした熊野川の流れも十津川と合流し、流量が豊かになり勢いを増す。清らかな十津川と合流したおかげて、水質も少しばかり改善したようだ。流れが早くなったため、漕がなくてもスイスイ進む。パドルをハモニカに持ち替え、夜に備えて練習に励む。当然ながらまたのんびり。

 

十津川と合流

   

志戸のジェット船乗り場にさしかかる。既に3時であり、乗客のピークは過ぎたのか、落ち着いた表情だ。
「ここから下は熊野川はわれわれだけのものになる」
野田さんは『日本の川を旅する』のなかで記述しているが、残念ながらそんな特別な感情は湧いてこなかった。
「ここから下あと少しでわれわれのツーリングは終わりになる」
名残惜しさがつのってくる。ゴール地点、三和大橋が見えてきた。

まだまだ、あわてる事はない。最後までのんびりいこう。コックピットから足を抜き、カヌー上に投げ出し寝そべる。流されていく感覚がなんとも心地よい。やがてカヌーは、岸辺の茂みにひっかかり停止。そのまま眠りへとおちていった。

動画にリンクします。
けっこう速いのだ!

30分程たっただろうか。目を覚ました私は、最後の気力を振り絞りゴールへ。二人は既にカヌーの撤収を終えており、呆れ顔で私を迎えた。

その夜は、手早く食事を整え、早々と焚火へ移行。カヌー疲れからか、みんな無言のまましんみり、うとうと。まだ、7時である。が、しばしの休息を経て、徐々に元気を取り戻し、いつもの宴へと展開していった。


参加者全員に
「かっとばせドリーマーズ カープ誕生物語」のDVDが配られました

 

7.帰路へ

翌朝は、バタバタという音で目を覚ます。強風でテントが吹き鳴らされている。実はこのとき台風が北上してきていて、その影響が懸念されていたのだが、東に大きく進路を変えたため空は快晴。強い風は台風の置き土産だ。荷物を入れたままのテントが、ガラガラ音をたてて飛ばされたりしたが、何とか片付けも完了。車で2分、湯の口温泉へ。
今回のツーリングはこれで終了。ちょうど11時。ここでコタカハさんと別れ、くぼっちを新宮駅まで送り、駅の売店でめはり弁当を買った。

 

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