小川 2005.4.29〜30
「宮崎にはきれいな川がたくさんあるから行ってみよう!」
海野の言葉に誘われて、宮崎県は延岡市に注ぐ北川、その支流の小川(こがわ)に、海野、桂とともに出かけてきました。透きとおる水、新緑萌える山々、ここはまさしく楽園だ!
1.感激! 小川に到着
国道326号を南に向けて走り、北川橋を左折。ここで北川本流と別れ、小川沿いに国道10号線を遡る。今回の小川ツーリングの出発地点は、尾平の少し上流、日豊線の鉄橋から少し下った場所。
河原に停止した車から飛び出し、大きく深呼吸。澄み切った小川の流れに目を奪われる。青空に新緑が映える。ここに来るまでに何時間費やしたことか。全てが歓びの笑顔となり、口元が緩む。
「すげぇ、本当にきれいだ。来てよかったよ。さあ、大急ぎで準備にかかろう!」
11時半、いよいよスタート。一斉に流れの中にカヌーを入れるが、誰一人としてパドリングしようともせず、ただただ川底に目を落とす。
「信じられん。完璧に透きとおっている。底まではっきりと見える」
流れにカヌーを浮かべてみると、岸から見ていたときをはるかにしのぐ感慨がこみ上げてくる。
「こんなに素晴らしい川があるんだねぇ」
ひたすら感激しながらも、ゆっくりとカヌーは流れ、そして止まる。その間、じっと底を覗き込んでいる。顔をあげると、若々しい緑に埋め尽くされた山が青空に映える。うぐいすの声がこだまする。
2.泳いじゃえ
美しいものが身近にあれば、見ているだけではなく、手でさわり、全身で感じたくなるのが人の世の常。休憩のために上陸したところで、私は水中眼鏡を取り出し泳いでみた。とても冷たく、水中を観察する余裕などない。たまらず這い上がるが、決して泳げない温度ではない。ゆっくり呼吸を整え再び泳ぎだす。もう大丈夫。底の石がはっきり見える。もちろん乱舞する魚も確認した。
「すごいよ! 桂さんも泳いでみんさい!」というと、はじめは拒んでいた桂も、カヌーからおもむろに水中眼鏡を取り出した。最初から泳ぐつもりで来てたんだ。「大丈夫。冷たいのは最初だけで、すぐに慣れるよ!」
3.瀬口でキャンプ
この日は瀬口の川原でキャンプ。広い川原にタープとテントを設営。国道から離れた場所なので、静かで心地よい。カヌーよりも登山を愛する稲田さんも合流し、賑やかな宴が始まった。
宴もたけなわの頃、タープから抜け出し夜空を見上げ、空全体にちりばめられた、美しく瞬く無数の星に息をのんだ。こんなにたくさんの星をみるのは初めてだ。そして、星ひとつひとつがとても大きく見える。
「星がきれいじゃ。すっごっく大きくみえるよ。いつもの3倍はある!」
思わず叫んでしまったが、残念なことに私の言葉には誰も反応してくれない。適当なことを言っていると思われたのか。しつこく声をかけていると、「そんなに言うのならみてみよう」と、稲田さんが腰をあげた。
「うわっ、ほんとや。でかい!」と稲田さんが叫ぶと、桂さんも飛び出してきて、しばし星の鑑賞会となった。
4.翌朝
翌朝、小鳥たちが一斉に歌い出すのを合図に目を覚ます。5時だ。明るさはあるが、夜の気配は抜け切っていない。コーヒーで身体を温めてから、「大物を狙うべし」と釣竿を手に川に向かう。ルアーを投げ込むがあたりがない。新調したルアーなので、魚に嫌われているのかと思いつつ、場所を換えたところすぐにヒット。元気なウグイだ。
キャンプサイトへ戻り、ラジオで天気予報を聞く。今日は午後から天気が崩れ、夕方から雨。明日は終日雨で強く降るので注意が必要とのこと。この地でもう一晩キャンプするつもりでいたが、予定変更。今日一日漕いだら撤収、帰路に着くこととした。
天気が下り坂ならば、晴れているうちにもう一度泳いでおこう。キャンプサイトの撤収にかかるみんなをよそに、私一人、水中眼鏡をつけて泳ぎ出した。水深4、5メートルはある淵だが、底にある大岩まではっきり見える。川底から突き出した木を発見し近づいてみる。そこに陽が差し込み、なんとも幻想的な情景だ。流れに身を任せ、川底を観察しながら漂っていると、自分の影がくっきり映し出されているのを認め感激。浅く、水温がやや高い場所へ移動すると、無数の稚魚たちが盛んに泳ぎ回っている。狙いを定めてシャッターを押す。
キャンプサイトに戻り撤収の作業をしていると、別のグループの人たちが、たくさんのカヌーを載せた車で乗り付けてきた。
「熊本からです。この下でキャンプしています。毎年きています。きれいでしょう。ここは最後の楽園です。」
「今日でお帰りですか。そうですね。夕方からの降水確率は80%。ここでは80%だったら必ず降るから、その方が良いですね。」という。我々の判断は間違いなかったようだ。
5.ゴールへむけて
全ての準備が整いスタートしたのは11時過ぎ。今日もまた、超ゆっくり、のんびりだ!
しばらく進んだところで海野が声を上げる。「昨日よりきれいになってるんと違う!!」
確かにそうだ。瀞場を迎えるたびに、水量が少なくなるように感じていたが、水の大半が、川原を埋め尽くす砂の中を流れ、その間にすっかりろ過されているんだ。
カヌーを止めて底を覗き込んでいた桂が叫ぶ。「あ、テナガエビや」
美しく穏やかな小川ではあるが、大雨となり増水すると大変な猛威を振るうことだろう。川面から10メートル程度の高いところに、流木の残骸がたくさんついている。昨年、頻繁に訪れた台風の爪あとだろう。また、増水のため完全に横倒しになり、根を空気にさらしている巨木の姿は凄惨なものだ。だが、その倒れた木からも、緑の若葉が芽吹いている。強い生命の力を感じずにはいられない。
青空は次第に雲に覆われてしまい、川下から吹き上げる風が力を増してきた。もうのんびりはしてられない。風を避けるため、思いっきり前傾し、精一杯の力で漕がなければ後戻りしてしまう。堰をひとつライニングしたところで、眼前に大きな橋が現れた。あそこが今回の最終ゴール。14時20分、無事到着。
ちなみに、この夜はフェリーで四国にわたり松山泊。翌朝、道後温泉につかったあと、伊予西条うちぬき公園を経由して、それぞれの家を目指しました。