伊吹山 2010.10.10

始まりは4年前の春、琵琶湖西岸の安曇川を訪れたときのことです。カヌーに乗って木々の生い茂る河口を抜け、広い琵琶湖に漕ぎ出ると、その遥か彼方、青空の中に雪をいただく真っ白な山が、うっすらと雲のように浮かんでいました。
「なんて山だろう。いつかこの山に登ってみたい。」
このときはまだ名前も知らなかったのですが、ただただ魅せられてしまいました。

安曇川河口から見た伊吹山 「安曇川・琵琶湖 春の息吹」をご参照ください

 

伊吹山は標高1377メートル。百名山のひとつに数えられています。山頂一体は、美しい「お花畑」になっており、「伊吹山頂草原植物群落」として国の天然記念物に指定されています。固有主を含む多種多様な植物を有し、薬草の山としても知られています。戦国の世、織田信長はポルトガルの宣教師に50ヘクタールの土地を与え薬草園を作らせ、本国から約3000種の薬草を移植させたという言い伝えもあります。ヨーロッパ原産の牧草などが古くから伊吹山にのみ自生することは、これを裏付けるものとも言えなくはありませんが、薬草園の痕跡も、ヨーロッパ原産の薬草も残されておらず、現在のところは幻と言わざるを得ません。(『伊吹山自然観察ガイド』村瀬忠義、須藤一成、草川啓三、山と渓谷社)

さて、今回の我らがまぬけカヌークラブ特別企画「伊吹山登山」ですが、登山メンバーは桂さん、稲田さんと私。サポートとして海野さんファミリーが伊吹山ドライブウェイで山頂駐車場までかけつけてきてくれました。

 

登山メンバーが集合した9日は終日雨。半ば以上は登山中止という気持ちで床に就きましたが、翌朝目が覚めると前日の雨は上がっており、天気予報でも、この後天気は快方に向かい午後は晴れるという。とりあえず様子を伺おうと登山口まで駆けつけてみると、いくつかのグループがまさにこれから登山をスタートするところでした。「行くしかないでしょう。なんとかなるよ」との、登山スペシャリストの稲田さんの一声にみんなが同意。いざスタート!

9時20分登山開始。スタートしてからは森の中の道。ぬかるみが続き大いに悩まされます。1合目、森が終わり視界が開ける。ここから先は草原の道となります。私は登山のことなど経験も知識もまるでないので、稲田さんから離されないことだけを考え、がむしゃらについていきました。先行するグループを次々と抜かしながら、3合目を過ぎました。さすがに何かおかしいなって気づき、「これってかなり速いペースじゃないの?」と稲田さんに問うと、「そうよ。よく付いて来るなって感心してたんや」だって。いやはや、しんどいわけだ。自分のペースで登ればよかったんだ。たまらずペースダウン。しかし、これまでのオーバーペースがたたり、足の付け根の筋肉に痛みを感じ始めました。この先大丈夫でしょうか。

6合目を過ぎたころ携帯がなった。海野さんがドライブウェーの終点に付いたそうだ。長時間待たせちゃいけないから急いで登りきらなきゃって思いはしましたが、既に疲労でいっぱいいっぱい。とてもペースアップなどできません。「待ってるからゆっくりおいで」って言葉に甘えさせてもらいます。

7合目あたりから斜面が急になり、高さがまちまちな岩を一つ一つ踏み越えて進まなければなりません。次第に岩が大きく段が高くなるので、やむなく手を突いて、四つんばいになって登りました。足は痛いし体はくたくた。もう体が融けてしまいそうです。

9合目からはガスに包まれ、真っ白な世界となりました。傾斜が緩くなり土の道となるので歩きやすくなるはずだったのですが、情けないことに右足の限界が近いようで、まるで夢の中にいるように、踏み出せど踏み出せどいっこうに前に進みません。山登りって本当につらい大変なことなんだ。一歩一歩身にしみて感じました。

それでも目指す山頂まではあと僅か。12時20分。無事山頂にたどり着くことが出来ました。ばんざーい!  山もまた楽し。

 


安曇川・琵琶湖 春の息吹

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