四万十川 2003.3.21〜23

1.快晴、四万十川

雲ひとつない青空の下、列車は江川崎に到着した。桂は、「シマムタ共遊国の平塚さんが駅まで迎えに来てくれる」というが、その姿はない。今回桂はカヌーをレンタルする予定だ。「ここで待とう」て、桂は言うが、「自分のカヌーも運べんで、何がカヌーイストじゃ!」と言い捨て、出発地点となる約1キロ先の川原を目指して歩き始めた。平塚さんもそこにいるはずだ。

今回は、昨年購入したHIVIXを担いでのはじめてのツーリング。これまで使ってきたフェザークラフトに比べて重いの何の。いろいろ詰め込んだバッグは、優に30キロを超す。作ったメーカーの方でも、担いで歩き回るなんて想定していなかったようで、背負う仕様になっていない。バッグの取っ手を右の肩にかけ、本体を腰に乗せて、体を大きく前傾させて歩く。

休み休み、桂に追い抜かれ、見る見るはなされていく。それでも半分以上過ぎ、もうすく国道というところまでたどりついた。その時背後から、「連れて行ってあげるよ」と、庭に出ていたおばさんに声をかけられた。旅先では人の好意には甘えるべし! と軽トラに飛び乗った。おばさん、ほんとうにありがとうございました。

川原で平塚さんと合流。間もなく桂も到着した。桂がレンタルの手続きをしている間に、パーツを広げHIVIXの組み立てにかかる。「よくいるんだよね、ここに来て説明書を広げてるやつ」という平塚さんの侮蔑のことばをもろともせず、私は説明書に目をおとした。

またもや悪戦苦闘。40分かかりました。その間に桂は買い出し。効率的に準備ができた。昼食はおにぎりで済また。1時15分、いよいよ出発だ、出発進行!

 

2.江川崎 → 口屋内

スタートしてすぐ、今回最大の瀬に差し掛かる。まあ何とかなるだろうとそのまま突入する。前回来た時は、カヌー館の下からのスタートだったのでこの瀬は通っていない。ザブンザブン。肩口から水を浴び、たちまちずぶ濡れになる。予想していた以上に大きく長い瀬だ。HIVIXでは初の本格的な瀬であり、ドキドキしながらも何とか無事通過した。

 

「いとうさん、水出し手伝って!」と後ろから桂の声がする。桂は、始めて乗るFRP艇に戸惑っているようだ。「ファルトボートってごっつう操縦性よかったんやな。この船、くるくる回って、全然まっすぐ進めへん」スプレーカバーをせずに下っていた桂艇は、既に水舟だった。

流れが静かになり、柔らかな日差しの中漕ぐ手を止め水に両手を浸す。ひんやりとしてとても心地よい。川原には菜の花が揺れる。鶯の声が谷を渡る。春爛漫の四万十川。心が洗われる。

柿の上にさしかかる。前回1994年に来た時にキャンプしたなつかしの場所だ。ちょうどテントを張ったと思しきとこに、大きな橋がかかっていて驚いた。おまけに、あの時は一面にバラスが拡がる美しい川原だったのに、今はそれがない。「どうしたんだ! 橋なんか架けるからみんな流れてしもうたに違いない!」なんて思っちゃいましたが、これは間違い。水位が前回と比べて高いのだ。1メートルぐらい違う感じだ。時刻は4時。もう上陸しても良い時間だが、今日の目的地は口屋内。「後30分ぐらいだ、頑張ろう!」と、桂に声をかけパドルを握る手に力を入れる。

      

川下から向かい風が吹き上げる。漕ぐ手を止めると全く進まない。水面だけを見ていると、水は確実に後方へ流れていっており、順調に下っていると感じるのだが、目を岸にやるとびっくり。全く進んでいない。漕げども漕げども進まない。歩くよりも遅い感じだ。なまりきった腕が痛み出したが、歯を食いしばって漕いだ。

口屋内までもう少しというところで携帯が鳴った。「やなぎです。今口屋内の沈下橋にいます。いとうさんどこですか?ボイジャーのコタカハさんもいますよ。」という。ホームページで知り合ったやなぎさん、コタカハさんが駆けつけてくれた。何と素晴らしい事か。うれしい知らせに舞い上がった私は「あと10分でつきます!」と言うや、最後に力を振り絞りって口屋内を目指した。

口屋内の沈下橋の袂、カヌーを引き上げたところでボイジャーのコタカハさんに声をかけられた。「劇的な出会いをと思って何も連絡しなかったんです」 沈下橋のほうから歩いてくる人影。スーツ姿に長い髪を後ろでくったやなぎさんだ。「お疲れ様でした。ビールをどうぞ」すぐに焚火を起こし、四万十川、カヌーのこと、野田さんのこと、平塚さんのこと、大いに語り合いました。この後、やなぎさんはご自宅へ帰られ、コタカハさんとは一緒に中村まで下ることとなりました。

     
やなぎさん、わたし、コタカハさん                    

 

ホーム