朗読の部屋
ナレーター・平野美保の語りの世界。
語りと音楽の融合した作品を、随時紹介していきます。
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 第2弾 宮沢賢治『セロ弾きのゴーシュ』  CD制作中

宮沢賢治『セロ弾きのゴーシュ』

2001年5月13日 愛知県幸田町民会館にて           
2001年6月16日 名古屋電気文化会館 ザ・コンサートホールにて


語り:平野美保
音楽:ヒラキ・シンセティック・オーケストラ

←写真をクリックするとライブ音声が聴けます(MP3)。
 朗読の部屋第2弾として、宮沢賢治の『セロ弾きのゴーシュ』に挑戦。
 5月13日の舞台出演をきっかけに、CD化に取り組みます。
 宮沢賢治の独特の雰囲気を壊さないように、物語の楽しさと音楽の面白さも加味した作品を目指します。
<制作メモ:音楽編>
 セロ弾きのゴーシュにはたくさんの音楽が出てきます。
 でも、原作ではいずれもどういう曲かはっきり書いてありません。

 最初に登場するのは、「第6交響曲」。
 ゴーシュ達の楽団が演奏会のために練習している曲です。
 私たちの作品では、これはベートーベンの「田園」と解釈しました。
 「第6交響曲」と言ったら、「田園」しかふさわしいものが見あたりませんから。
 チャイコフスキーの「悲愴」もありますが、田舎の楽団が取り組むには重たすぎるんじゃないでしょうか。
 「田園」なら、原作の雰囲気にもぴったりです。
 第1楽章の冒頭部分を使います。
 練習風景なので、演奏が下手くそだったり、アンサンプルがうまく合わなかったり、指揮者の指示で同じところを何度も繰り返したりします。
 シンセサイザーでリアルな演出をします。

 次に出てくるのが、「トロイメライ」。
 ゴーシュの部屋にやってきた猫がリクエストした曲です。
 これは誰もが知ってる有名な曲、と思ったら、これは、演奏されません。
 代わりにゴーシュが演奏し始めるのが、「インドの虎狩り」という曲でした。 どんな曲か不明。
 とにかく、トロイメライとは正反対の激しい曲らしい。
 そこで、私たちの作品では、ワーグナーの「タンホイザー序曲」から、チェロのパートを抜き出してきて使いました。
 「タンホイザー序曲」は有名な曲ですが、一部のパートだけ抜き出すと、いったい何の曲か分かりませんね。
 激しく上下動を繰り返す速いパッセージで、猫が嫌がって逃げ出しそうな曲になりました。

 次は、「愉快な馬車屋」。
 狸が、太鼓の練習をしたいとリクエストした曲。
 これも、どんな曲か不明。
 私たちの作品では、シュトラウスの「アンネンポルカ」を使用。
 この曲には、スネア・ドラムがユーモラスなリズムを刻む部分が出てくるんです。
 メイン・メロディーをチェロ独奏にして、ドラムのパートを、狸らしいポンポコの音色に変えてやると、「アンネンポルカ」が「愉快な馬車屋」に変身。
 ホントに楽しそうに太鼓をたたく狸の姿が目に見えるようです。

 次は、「ラプソディー」。
 親ネズミが、子ネズミの病気を治してほしいとリクエストした曲。
 日本語では、狂詩曲と言います。「狂」という字のイメージが悪いので、日本語の方は消えてなくなるかもしれませんね。
 ラプソディーは色々あります。
 私たちの作品では、リストの「ハンガリー狂詩曲第2番」を使います。

 さて、次は再び「第6交響曲」。
 演奏会の本番で、フィナーレの部分です。
 「田園」のフィナーレは、穏やかすぎて少し物足りないですね。
 演奏終了後、会場から万雷の拍手をもらうのですが、音楽と会場の反応にギャップがありすぎます。
 ここの処理をどうしたらいいか、思案中です。

 最後に登場する曲は、再び「インドの虎狩り」。
 鳴りやまぬ拍手に困った楽長が、ゴーシュにアンコールをやらせようと、舞台へ無理矢理押し出します。
 ゴーシュが舞台に登場してようやく拍手が止みます。
 やけになったゴーシュは、あの激しい「インドの虎狩り」を演奏し始めます。
 聴衆はど肝を抜かれ、シーンと聞き入ります。
 そして、曲が終わった途端、前にも増した拍手と歓声が会場にあふれます。
 この、会場の反応も、シンセサイザーで演出します。
【ストーリー
 宮沢賢治の「セロ弾きのゴーシュ」をご存じかと思いますが、
まずは、ごく簡単にご紹介。
 楽団の中でおちこぼれのゴーシュのもとへ、次々と動物たち(猫、かっこう、子狸、ねずみの親子)が現れます。その動物たちがゴーシュに様々な注文をしていくうちに、ゴーシュの演奏が知らず知らずのうちに素晴らしいものになっていくと言うお話。
 
【脚本は、音楽も大事な要素】
 今回、ひらきプランニング流の制作をするにあたって、まず、脚本を作りました。「ピーターとおおかみ」を制作したときもそうですが、お話は、音楽も大事な要素として制作しています。そして、子どもと大人が一緒に楽しめるように、聴きやすく、より、楽しめるように。

【奥の深さを感じて
 それで、脚本を作りながら、改めて感じたのですが、
宮沢作品というのは、とっても奥が深いんだなあ、と。
読んでいて案外分かりにくい場面が結構あるのですが
何度も読んでいるうちに「あ、そうか、もしかしたら、こういうことなのかも」なんて、思えてくるのです。
 例えば、初めは、動物たちが演奏の下手なゴーシュに音楽を教えに来てくれて、ゴーシュが最後成功するお話かな
   (猫は「激しさ」    かっこうは「音の正確さ」 
   子狸は「リズム、テンポ」 ねずみの親子は「音の表情、豊かさ」)
程度に思っていたのです。
 ですが、だんだん読みこんでいくうちに、ゴーシュの心の変化にも気がつきました。動物たちが、ゴーシュの元へ来るたびに、ゴーシュのセロの技術が確立されていくだけでなく、心も成長していくのです。荒れた心がだんだん軟化し、ねずみの親子には、医者ではないから病気を治せるはずもない、と思いながらも、ねずみへの思いやりが伝わってくるのです。

 そういう、作者の様々な思いが作品を通して伝わってきた途端、この作品にすっかり魅了されている自分に気がつきました。そして、同時に、多くの方にこの作品の素晴らしさを感じていただきたいと思うようになってきたのです。

【CD化の予定】
 CD化する予定で現在準備を進めています。1つの形にするのにはやはり時間もかかり、完成するまでにはもう少し時間がかかりそうですが、
宮沢作品の良さを失わず、かつ、音で聴く良さを味わっていただけるものにしていきたいと思っています。

【こういった感じに・・・・・・】
 ほんの最初の部分ですが、サンプル音声を聴けるようにしてあります。
 上の写真をクリックしてください。
                    



第1弾 音楽物語『ピーターと狼』 
CD完成

 プロコフィエフ作曲
音楽物語
『ピーターと狼』(日本語版)
語り:平野美保
演奏:ヒラキ・シンセティック・オーケストラ(SC88Pro)
←写真をクリックするとサンプル音声が聞けます。
<内容>
 「ピーターと狼」はロシアの作曲家・プロコフィエフの作った子どものための音楽物語です。
 劇的なオーケストラ音楽と巧みなナレーションで、物語が展開します。
 今でも世界中の子供たちに親しまれています。

 このCDでは、日本語の美しさに親しんでもらうために、言葉遣いと発音に特にこだわりを持って作成しました。
 演奏は、シンセサイザーです。
 原曲の雰囲気を損なわないように努めながら、その魅力をくっきりと浮かび上がらせるために、独特の演出がほどこしてあります。
 従来の「ピーターと狼」とはひと味違う作品が完成しました。
<音楽制作メモ1>
 現在発売されているCDを聴き比べてみると、
ナレーションの編集が粗雑なものが、なんと多いことか!
 音楽のタイミングと合致してなかったり、
台詞の挿入場所が悪くて音楽が間延びして聞こえたり。
 テープのヒスノイズが目だってて、編集のつなぎ目がもろ分かりだったり。
 これは、日本語英語ドイツ語にかかわらず、同じ。
 有名な俳優による語りがほとんどだけど、その値打ちがだいなしだなぁ。

 指揮者自ら語ったものもあるけど、これは論外。
 発音に難がありすぎて、鑑賞に堪えられない!
 有名な指揮者の肉声が聞けるというメリットだけ。
 せっかく演奏が一流で、録音状態も最高なのに、
2度と聴く気にならなくなってしまう。

<音楽制作メモ2>
 最初に小鳥が登場する場面。
 フルートの軽快なパッセージが続くところ。
 楽譜を見ると、速度指定が176となってる。
 (1分間に四分音符が176拍ってこと)
 これは、かなり速い。
 実際に、フルートをこの速さで演奏するのは、相当難しい。
 実演奏では、たいてい120ぐらい。
 正確に演奏できる速さまで落としてるのかな。

 でも、プロコフィエフが要求したのは176の速さ。
 シンセサイザーなら、どんな速さでも簡単。
 楽譜指定の速さで演奏させてみると、
小鳥の生き生きとした姿が浮かび上がってきたではないか。
 なるほど、プロコフィエフはこれを期待してたんだね。

<音楽制作メモ3>
 プロコフィエフの没年は1953年。
 ということは、この曲は著作権保護期限が切れるのが2003年ってこと。
 あと、もう少しだったのに、残念。
 仕方ない、JASRACに使用許可を申請するとしよう。
 期限切れまで待ってられないから。

<音楽制作メモ4>
 JASRAC中部支部の池上さんがHPを見て間違いを教えてくれた。
 プロコフィエフの著作権保護期限切れは2003年だと思ってたら、違ってた!
 普通、没後50年で期限切れになるはずなんだけど、例外がある。
 それが、戦時加算。
 第2次大戦中、日本は連合国側の著作権の保護を怠ってたから、その分を加算して、日本だけ著作権保護期間を延長するってことが戦後処理で決まったらしい。
 (これに関しては日本人として言いたいことがいっぱいあるけど、省略)
 でも、プロコフィエフの出身はソ連(ロシア)。
 ソ連はサンフランシスコ講和条約に調印してないぞ。
 戦時加算対象外のはず。
 でもでも、プロコフィエフは、なんと、フランスの著作権協会と契約を結んでいた!
 (なんで、こんなことするんだよ。)
 だから、プロコフィエフは戦時加算の対象。
 計算すると、『ピーターと狼』は、2014年5月21日まで保護期間内。
 詳しくは、JASRACのHPへ。http://www.jasrac.or.jp/jhp/faq/a3.htm#01

<音楽制作メモ5>
 アヒルがドボンと池に飛び込む音。ホルンがちゃんと描写してるんですが、普通の演奏では、ほとんど無視しちゃってますね。ナレーションがかぶってたり、全然聞こえなかったり。でも、この演奏では、しっかり強調してます。
 小鳥とアヒルの喧嘩の場面。小鳥が池の淵をチョンチョン駆け回るのを描写して、フルートの音が右へ左へと動きます。こういう表現は、実演奏では無理ですね。
 おじいさんがピーターを家に引きずってく場面、アヒルが狼に追われて逃げ出す場面、小鳥が飛び回る場面でも、動きをつけました。
 ピーターがおじいさんの言うことを聞かずに駆け回っている場面。軽やかなピーターのメロディーの陰で、ファゴットの重低音が鳴り続けます。これは、おじいさんがかなり怒ってる描写なんです。少し強調していれてあります。 
 猫が木の上でガタガタ震えている場面。プロコフィエフは芸が細かくて、これもちゃんと描写してます。でも、従来の演奏では、あっさりやり過ごしているものがありますね。この演奏では弦のトレモロも合わせてガタガタ感が伝わってくると思いますよ。
 それから、狼が捕まって激しく暴れまわる場面。普通の演奏だと、のたのたした感じで、全然「激しく」ありません。というのも、楽譜の指定がこうだから。ここでは、動きを速くして、緊迫した雰囲気を作り出しました。プロコフィエフさんごめんなさい。
 狼が棒に結び付けられて運ばれていく場面。気を失ったまま大口を開いていびきをかいている音が聴けます。もちろん実演奏では聞こえませんよ。

<音楽制作メモ6>
 おじいさんがピータを連れて帰り、門に鍵をかけてしまう場面。
 ガチャンとしっかり閉めてしまうイメージを強調するために、ティンパニーに前打ちを加えました。
 うまく効果が出ているでしょうか。

<音楽制作メモ7>
 弦楽器の配置。
 現在のオーケストラ配置は、プロコフィエフの時代にはありえない形式でした。だから、現在の配置で演奏すると、音が一方に偏ってしまって、バランスの悪いところが出てくるんですよ。
 今回の演奏では、次のようにパンを設定しています。
 左にビオラ。
 左中間に第1バイオリン。
 中央にコントラバス。
 右中間に第2バイオリン。
 右にチェロ。
<ナレーション制作メモ1>
  ピーターが狼を捕まえたあと、狩人たちにお願いをする場面。
 今までのナレーションでは、たいていこんな台詞になってましたね。
 「撃たないで! 狼は動物園に連れていこうと思うんだ。一緒に手伝ってー」
 友達の小鳥さんに話しかけるのと同じ口調。
 大人に向かってタメグチで話す子どもって、いけませんよね。
 最近の童話はこれで許されてるみたいですが、あまり好ましくない傾向ですよ、教育上。
 ピーターの年齢設定にもよりますが、今回は、きちんと丁寧な言葉を話せる子どもにしてみました。
 「撃たないでください! 狼は動物園に連れていこうと思うんです。おじさんたちも手伝ってください」
 
<ナレーション制作メモ2>
 登場人物の性格付け。
 ピーター:10歳ぐらいの元気のいい男の子。
 小鳥:よくしゃべるお姉さん。ちょっと高ビー。
 あひる:気の強い太っちょのおばさん。
 猫:こずるい奴。いざとなるとびびって何もできない。
 おじいさん:いつもぶつぶつ、頑固じいさん。
 声の表情だけで、人物の性格を描きわけるのは大変ですね。
 納得いくまで何度もとりなおして、喉が痛くなっちゃいました。
 今回、いいトレーニングになりました。

<ナレーション制作メモ3>
 ほぼ完成。
 で、音楽と合わせて完成品を聴いてみると、作品として、生き生きとした感じに聴けます。
 やっぱり、プロコフィエフの傑作ですね。
 でも、冷静に聴きなおしてみると、ところどころ気になるところがいくつか出てきました。
 音楽の雰囲気と合わないところ、音楽がうるさくてナレーションの聴き取れなくなってしまったところなどなど。
 部分的にナレーションの入れ替え。

<ナレーション制作メモ4>
 仕上げで、手直しをしていくと、その他のところがまた気になりだしてしまいます。
 完璧を目指したら、きりがない。
 でも、この作品は、一過性の流行りものとは違う。
 10年後20年後にも確実に残るはずです。
 ちゃんとしたものを作れば、きっと、貴重な財産になる、と思い、もうひと踏ん張り。

<ナレーション制作メモ5>
 最後に狼をどうやって動物園に連れていくのかは、解釈の分かれる場面。
 「ピーターと狼」を描いた絵本などを見てみると、尻尾を縄で縛られた狼が狩人たちに連れられて歩いている図が多いですね。
 でも、これではラストシーンのどんでん返しがうまくイメージできないんですよ。
 このCDでは、気を失った狼が棒に括りつけられて狩人に担がれていくという状況設定にしました。

<ナレーション制作メモ6>
 ラストシーンのどんでん返し。
 ちょっと工夫しました。
 ここまでやらないと、普通、納得できないでしょう。
 23分の音楽物語を終わるのにふさわしいハッピーエンドになったと思いますよ。

<今後の予定>
第3弾 「シェヘラザード」 
原作:アラビアンナイト 音楽:リムスキーコルサコフ
第4弾 「ドン・キホーテ」 
原作:セルバンテス 音楽:R.シュトラウス

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