おほかたに

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    七日

111 大方に 思へばゆゆし 天の川 今日のあふ瀬は うらやまれけり

    返し

112 天の川 逢ふ瀬はよその 雲居にて 絶えぬ契りし 世々にあせずは

【通釈】
 
    七日

  世間一般の恋として考えるなら、牽牛星と織女星の一年に一度の逢瀬などと
  いうのは不吉だと思ってしまうところですが、あなたに逢えない今日ばかりは、
  二人の逢瀬が羨まれることです。

    返事

  天の川での牽牛星と織女星の逢瀬は、しょせんよその雲居での出来事であって、
  わたしたちの絶えぬ縁が、これからもずっと浅(あ)せないでいればいいではないか。

【語釈】
●大方に……「おほかたを」の本文あり。
・「おほかたに」世間並みに考えれば  『全評』『叢書』
・「おほかたに」世の常一般の恋として考えれば  『論考』『国文』
・「おほかたに」ざっと考えてみると 『新書』
・「おほかたを」世の常一般の恋を思うと  『評釈』
・「おほかたを」一般的なこととして考えると 『大系』
・「おほかたを」一年の中の全体の日々のことを考えると 『集成』
●大方に……宣孝の歌とする説と、式部の歌とする説あり。
・宣孝 『論考』『叢書』『集成』『評釈』『大系』  ・式部 『国文』『経緯』

大方に思へばゆゆし……世間よその雲居にて……わたしたちには関係のない天上のことであって。
絶えぬ契りし世々にあせずは……「ずは」は打消助動詞の「ず」+係助詞「は」。〜でなくて、〜せずに、〜ないなら、などという意味を表す。わたしたちの夫婦としての縁も、いつまでも衰えなければいいではないか。

【参考】
『風雅和歌集』巻五、秋上、465
「大方を 思へばゆゝし 天の川 今日のあふ瀬は うらやまれけり」