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人のおこせたる あなたのことをひそかに想い、逢いたいものだと嘆いているうちに夜を明かしたので、 七月一日ごろ、あけぼののころであった。 秋の情景が広がっているように、わたしとあなたの仲も秋風が立ち、 わたしは飽きられてしまった様子ですわねえ。 【語釈】 ●人のおこせたる……「人」を宣孝とみる説が多い。 ・宣孝 『集成』『新書』『経緯』『叢書』『評釈』『論考』 ●東雲……あけぼのと同じ、夜が明けようとする時分。 ●東雲の……「ほがらかに」「明るく」などの枕詞。夜明け前の薄暗い折と同様に、ぼうっとしていて。 ●ほがらかにだに夢を見ぬ……はっきりと、夢を見るはずが、夢さえも見なかった。 ●七月ついたちごろ、あけぼのなりけり……次の「返し」と行を分けてある本とない本がある。 ・左注 『全評』『論考』『叢書』 ・詞書だが、左注を兼ねる 『集成』『大系』 ●霧りわたり……一面に霧がたちこめ。 ●いつしかと……いつの間にか。 ●秋のけしき……「秋の情景」に、「飽きの気色」を懸ける。 ●世はなりにけり……「世」は男女の仲。 【参考】 『玉葉集』秋、449 しののめの 空霧りわたり いつしかと 秋のけしきに 世はなりにけり」
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