穀類

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『類聚倭名抄』や『延喜式』に記載のある穀物類について、分類しています。

秔米・粳米(うるしのね・うるしね) 粘りけの少ない米。今のウルチ米。
糯米(もちのよね・もちよね) 餅米のこと。粳米に比べて単位面積あたりの収穫量が少ないことや、餅を作るための米であったためか、あまり作られなかった。
ましらけのよね よく搗きあげた精白米のこと。
粺米(しらけのよね) ふつうに精白した米。
糲米(ひらしらけのよね) 玄米。身分の低い者が食べた黒米のこと。
からすむぎ エンバクのことか。イネ科の一、二年生作物。
小麦(こむぎ・まむぎ) イネ科の一、二年生作物。コムギのこと。弥生時代には渡来。
大麦(ふとむぎ・かちかた) イネ科の一、二年生作物。飴などの材料となる。
蕎麦(そばむぎ・くろむぎ) タデ科の植物。ソバのこと。種実を粉にしてそばがきやそば練りが食されていたが、8世紀に朝鮮から僧天珍が来朝して、ソバ粉にウドン粉を混ぜたそばきりを伝えた。薬用としても効用があるとして、葉も煮て食べたらしい。
粟(あわ) イネ科の一年生作物。果実は小粒で黄色。飴・酒の原料になる。モチアワは餅にする。
黏黍(あわのもち) モチアワ(糯粟)のことか。
みの カラスムギに似た草。実は米に似ていて、飯にしたという。
稗(ひえ) イネ科の一年生植物。粳と糯があり、干害に強い。味はあまり良くない。ほかの穀類と比べて安価で取り引きされた。大嘗会などの儀式用にも用いられた。
黍(きみ) イネ科の一年生草本。熟した実は穂状をなして垂れ、実は小粒で淡黄色、光沢がある。丹黍(あかききみ)・黍秬(くろききみ)などの種類があったらしい。
稷米(きびのもち) モチキビ(糯黍)のことか。

調理法による分類
水漿類 姫飯(ひめいひ) 水を多めにして炊いた柔らかい米飯。
水飯(すいはん) 干飯またはひめ飯に水をかけて柔らかくしたもの。
湯漬(ゆづけ) 干飯に湯をかけて食べる食事。
饘・固粥(かたかゆ) 釜で炊いたふつうの米飯。
汁粥(しるかゆ) 水を多くして炊いた、今日の粥。中に薯蕷や大根・栗・小豆・鰹・ワカメ・アワビなどをいれることもあった。
白飲・漿(こみづ) 米を原料にした重湯。汁粥よりさらにうすい。
薯蕷粥(いもがゆ) 汁粥の一種。薯蕷を薄く切ったものに甘葛の汁を混ぜて炊いた粥。禁中の大饗などに用いた。『宇治拾遺物語』『今昔物語』には藤原利仁が五位の侍を敦賀へ伴い、薯蕷粥を飽きるまで食べさせた話が載っている。
味噌水(みそうず) 雑炊のこと。
望粥(もちかゆ) 七種粥(ななくさのかゆ)ともいう。正月十五日、米・小豆・粟・黍子・みの・稗・胡麻のほか、大角豆(ささげ)・大豆・柿・芹・薯蕷などを入れて炊いた粥。
飯類 強飯(こはいひ) 甑で蒸した米のこと。
かしきかて 米に粟・稗・蔬菜・豆を混ぜて炊いた飯。
かたかしきのいひ 半熟の飯。
黒米飯 玄米だけを炊いた飯。
油飯(あぶらいひ) ごま油で炊めたチャーハンのようなものらしい。
餉(かれいい) 長期保存のため、干した飯。水や湯に浸してから食べる。
糒(ほしいい) 一度炊いた米飯を干したもの。
糄米(やきこめ) 籾つきのままの新米を煎り、臼で搗いて籾殻を除いたもの。
粔籹(こめ・おこしめ) →お菓子「干菓子」
頓食(とんじき) 強飯で作った握り飯。祝賀や通過儀礼、宮中や貴人の饗応のときなどに、身分の低い者に賜った。
餅類 粽(ちまき) →お菓子「餅菓子」
餅(もちひ) →お菓子「餅菓子」
粢餅(しときもち) 生米を水に浸して柔らかくしてから搗き砕き、丸く練った餅。茹でて食べる。
麹糵類 麹(かむたち) 今の麹と同じ。
糵(よねのもやし) 米や麦の芽。麦糵といえば麦のもやし。
大豆麨(まめつき) きな粉のこと。