良いリードを選ぶには
我々がファゴットを始めた頃は、リードは作るもので買うものではありませんでした。もっとも買おうとしても、ろくなものは無かったのです。輸入されていたのはヴィンデラーくらいだったと思います。
今では買うのが普通になっていますが、悪い事とは思いません。フリッツ・ヘンカー氏も「吹く才能と、作る才能は別なものだ。上手い人に作って貰えば良いのだ。ただし、同じものを買わないと、自分が一定しないから自分は同じ人に作って貰っている。」と言っておられました。
私も、自分が作っているから言うのではありませんが、アマチュアで吹く時間さえままならないのに、リード作りで時間を使うのは馬鹿らしいと思います。作るのが好きなら話は違いますが。
私はリードを作るとき刃物しか使いません。はみ出た所の修正に耐水ペーパーは使いますけれど、ヤスリは使いません。シェーパーも無く、プロファイルドマシンも使った事がありません。機械は最初は良いのですが、一旦狂うと対処出来ないからです。刃物は研げば良いし、手は磨り減ったりしません。ヤスリを使わないのは、ヤスリは筋と共に大事な肉を持って行ってしまうからです。つまり第一は必要な肉の付いたリードと言う事です。
次は先の開きです。私は開いたものが好きです、と言っても1mm〜1.2mmです。大きくて豊かな音が出せるし、ファゴット本来の音はそうでなくてはと思っているのです。先の開きの狭いリード(0.5mm以下)は運動性は良いようですが、楽器がびりびり鳴る、振動の快感はありません。テュッティで自分の音が聞こえない時は振動が頼りの事もありますしね。
大事なのは、楽器に付けた時に必要な性能を決めておく事です。私は、こうです。
(1)高い音は、high-eが、high-eの付加キー無しに単独で吹ける事。
(2)タンギングは4分音符≒138(4拍)がシングルで切れる事(中音域)。
(3)最低音からhigh-eまで鳴りむらが無い事。
これが最低の条件です。最低の条件がクリア出来ているリードは、レッスン効果があります。私がそう信じるのは、以下の経験からです。
友人に連れられて初めて菅原先生のお宅に伺った時です。早速先生は私に楽器を出させて、吹いて下さいました。驚いた事に、私の楽器はまるで違う印象を持ち主である私に与えたのです。それから、先生はその時使われたリードを下さったのです。その日は丁度先生がデットモルトの留学を終えられ、弟子たちとのパーティーでしたので私は吹きませんでした。次の日そのリードで吹こうとして愕然としました。吹けないのです。重くて、音を出すのがやっとです。考えました。私の楽器、先生のリードは同じです。さすれば、悪いのは一つしかありません。
これはファゴットを本気でやろうとしたきっかけでもあります。現在、私が作っているのはそんなに重くも、強くもありません。鳴らすのに息の力とアンブシャーを作る筋力は、多少必要ですけど。それでも吹けない人はいます。私のリードが使えないから吹き方が悪いとは、敢えて言いませんが、全く駄目だとすると何か問題がありそうです。
息の使い方が良ければ、それほど重くは無いはずです。
私の演奏を聴いて、こんな音を出したいと思って使って貰うのが1番なのですけどね。楽器が鳴る快感が良ければ私のものを、そうでなければ他のものを選んで下さい。