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2013年のドイツ旅行 その6

五日目

起きると快晴だった。気温は低いので歩くには良い季節という感じだ。朝飯は付いているので、食堂へ。必要最低限の食材は揃っている。昔はドイツのホテルとそれ以外の宿泊施設(ホテルガルニやペンジオン、ガストハウスなど)も朝飯は付いているのが当たり前だったが、今は別料金の所も多い。ここはホテルと言っているが朝飯だけ提供するので、ガルニ(Garni)である。

今回Booking com.と言う代理店を初めて使ったが、このホテルの利用者の評価が面白い。10点から3点まである。私の評価は7,5だった。悪くないが、周りがストリップ劇場など風俗営業の店があったりするので、人によっては評価が下がる。また部屋によっては煩かったりもする様だが、前もってメールでリクエストを出したのは良かった様だ。ハイデルベルクでもエレベータが無い事がそうした評価で分かっていたので、低い所をリクエストしたら果たしてそうなった。このホテルにも問い合わせをしたのが良かったのか、部屋の位置は悪くなかった。そうした評価の中で、「飯が悪い」と言うのと真逆の「飯が良かった」と言うのがあった。しかし、ハムやソーセージも4種類あるし、スプレッドも多くある。25年前だが、初めて自分で手配して(ネットではなく、駅の紹介所で)泊ったペンジオンなどパンとコーヒーそれにマーガリンとジャムくらいしか無かった。それ以降もその程度の宿に泊まった事があるので、ベルリンのこのロケーションで50EURと言うのは、飯も含めて文句を言える額ではなかろう。

それと今回はWi-Fiが無料で使える所を選んでいた。ドイツを旅行する時、かつてはThomas Cookというイギリスの旅行代理店発行の大陸時刻表を必ず買った。他の国のも載っているので、切り取って持ってきたが、これが高かった。ネットが使えればDB(ドイツ鉄道)のHPから何時でも時刻やその他の情報が得られる。一度しか使えない時刻表から解放されただけでも有り難い。このホテルももちろんそうで、Wi-Fiが使えればベルリンの他の情報も見られる。それに日本の情報やメールも使えると、昔に比して不安のない事は言うまでもない。

話を戻そう。今日はフランクフルトに移動するので、飯の後バゲッジを預け出かける。ドイツのホテルは、特に記載がなくてもチェックアウト後に荷物を預かってくれるので有り難い。しかし、何処に置くかはホテル次第(笑) ここでは手書きのメモに部屋番号を書いて貼った後レセプションの後ろの部屋に置いたが、問題は無かった。まあ、バゲッジの中は汚れ物や着替えなど大したものは無いので、財布とパスポートがあれば何とかなると思っていれば良いのだ。

さて、地下鉄はチケットが必要になるのでDBの電車と徒歩で回る。まずはフィルハーモニーに併設の楽器博物館を目指す。ツォー(Zoologischergarten)の駅からカイザーウィルヘルム教会を見て行こうと考えた。ツォーで降りてみてびっくり。大工事中である。2008年に来た時にあったショッピングセンターが全て取り壊されていた。ウィルヘルム教会も全体が足場で覆われ、その上から目隠しがされているので高いビルにしか見えなかった。どうもドイツ全体が工事現場になっている様だ。

動物園の前を通ってフィルハーモニー、ポツダマープラッツに続くこの道(ブダペスト通りからティアガルテン通り)は、大使館が並んでいる通りだ。日本大使館もここにある。2008年に来た時は桜が満開だったが、今年は寒かったのでちょっとの気配もない。日本は既に散っているのだから面白いものだ。40分ほどでフィルハーモニーに到着。次いで、前回休みだった州立の楽器博物館に行く。中は広いが客はほとんどいない。警備の人の方が多いのはご愛嬌だ。荷物はロッカーに預けさせられるが、写真を撮るのは自由だ。普通は撮ってはいけないので、博物館にしては珍しい事である。管弦打楽器、鍵盤楽器、から電子楽器まで揃っている。知らない楽器がこんなにあると言うのは驚きだ。ハープ型のピアノは面白い。管楽器では片方はフルート、もう片方から吹くとオーボエと言う一本二役の楽器が面白かった。各楽器横には解説のコピーがあり、0.05EURで売っているのだが、支払いはと訊くと「太鼓の所に入れる」と言う。確かに何カ所かにスネアが置いてあり、皮の部分が貯金箱の様にスリットが開いていた。まあ自己申告なので、払わない人もいるだろう(笑) 警備の人は黒いスーツなのだが、それとなく後を付いて来て見張っている。まあこれだけのコレクションなので、心配は分かりますがね。

1時間以上見ていたが、興味が尽きず がないので出る事にした。ポツダマープラッツに歩いて行くと、マラソンをしていた。ベルリンハーフマラソンが開催されていたのだ。ゴールが丁度ここだったので、観客も多く珍しいものが見られた。ここには壁の跡があるのだが、旧東ドイツの警備兵の格好で本物の通行ヴィザのスタンプを押してくれる。まあお金を取るのでパスしましたがね。頃合いの土産物屋を見つけ入ってみた。ベルリンの象徴は熊なのだが、立って両前足を挙げた状態で彩色した熊の置物が多くある。しかし、前にも書いたがこうした物が実に高価なのはドイツらしい。「手作り」=「高価」という図式が当たり前なのだ。K君はここで買い物をしたが、私は冷やかしただけだった。そこを出るとユダヤ人犠牲者へのモニュメントがあり、その先にブランデンブルク門が見えて来た。前回は観光バスで回ったので、気が付かなかったが案外近い。こうして見ると、東京は本当に大きいと実感した。ブランデンブルク門はベルリンを東西に分けた場所だが、ティアガルテンの中央を通る道が戦勝記念塔と直線で繋がっている。遠くまで続く道は中々壮観だ。

こうしている裡に時間が来た。宿に戻り、フランクフルトに行かなくてはならない。本当はベルリンとその周辺を見るのに一週間は必要だろう。とはいえ、それなりに楽しんだ二日間だった。さて、ここからはFriedrich Str.(フリートリッヒシュトラーセ)という駅が近い。ちょうど良いREがあったので、早速乗り込む。ところで、その駅まで歩いて行ったのだが、日曜なので人が少ない。閉店法があるので、一般の店は閉まっているからだが、不思議な感じだ。途中で貸し自転車(Mietrad)の大きな店を発見した。今回来てみてこの手の自転車が多い事に少し驚いた。DBも駅前でやっているし、それ以外の店もよく見た。確かに自転車で回れば効率的に回れるので、今度来る時は使ってみよう。などと考えていると列車はシャルロッテンブルクに到着。

荷物を受け取り、中央駅(Hbf)へ戻る。ICEでフランクフルトにはハノーファーで乗り換えるのが一般的だったが、直通が出来たので便利になった。来る度にDBが進化を遂げているのには驚く。まあベルリンやフランクフルトに大きなビルを構えられるのは、鉄道が成長産業だからなのだろう。しかし、古い車両を使い回して利益を上げている感もある。ICEは、現在三世代目が運用中だが、新幹線から見ると既に古い型の列車なのだ。今回、さすがに最初の型のICEに当たらなかったが、20年以上前から見ている列車は珍しくなかった。その代わり、REなどの地域列車が進化していた。液晶のディスプレイがあり、車内も奇麗だった。そんな物にも落書きがされるのは何故だろう。外国人が20%もいて貧民窟を構成していたり、貧富の差も広がっているとも聞く。ホームレスではなく、乞食が当たり前にいる様になっていた。明日の日本がそうならない様に願いたい。そうこうしている裡に5時間を掛け、フランクフルトに到着だ。

ホテルは駅から徒歩で数分のはずだが、この駅は広いのでこの中を歩く距離が長い。しかも工事をしている所があったので、近いはずと出たのに回り道になってしまった。カールトンホテルと言う所だが、リッツカールトンとは全然関係がない。間口の狭いレセプションでチェックインを済ます。エレベータを下りると数メートルの廊下があり、4部屋並んでいる。部屋は狭いが、日本のビジネスだとこんなものだろう。日本円で朝飯が付いて5000円程度の料金を考えれば、これは安い。嬉しいのはエレベータの所に自由に飲める給水機がある。ハイデルベルクでは水を買わないといけなかったのだから、これが有り難かった。しかも冷えていて旨い!

それはさて措き、出かける事にした。日曜なのでショッピングは出来ないが、レストランや土産物屋は開いているので何かはあるだろう。取り敢えず一番の繁華街ハウプトヴァッヘに行き、レマーでも見よう。歩き始めたのだが、意外に道が曲がっていて予測した場所に出ない。それでも歩いている裡にアルテオパー(旧歌劇場。今は演奏会場として使用)が見えて来た。予測より大分西寄りの道に出たのだ。フランクフルトは2004年に来て以来だが、ずいぶん変わった感じだ。高いビルが増えているし、工事中の高層ビルも多い様だ。目標からそれ程外れた訳ではないので、ハウプトヴァッヘからレマーへ回りマイン川を目指す。何せ着いたのが17時過ぎなので、時計を見ると19時を回る所だ。腹も減ったのでテアターの方に行き、その昔安さと量と味に惚れた小体な中華屋を目指す。しかし、見付からない。考えてみれば2000年に寄った店だ。その時の旅日記には

「China Imbis-Bistro Peking(北京快餐)と言うのが目に飛び込んで来る。Imbisなら軽食の意、快餐はファーストフードの意だから軽く食べられるだろうと入る。少し汚れた感じの日本にもよくある場末の中華屋さんの雰囲気だ。メニューを見ても高いものは無い。10マルクするものが高い感じだ。帰る日が近くなり米が食べたいと思っていたのだろうか、チャーハンが目につく。色々あるが鶏肉入りのチャーハン(Gebraten Reis mit Huenerfreisch)に決め、ミネラルウォーターと頼んだ。さて、待つ事7、8分。料理が来た。げげ、多い。何と30×15センチほどの楕円の皿に山盛りのチャーハンが来た。残すしかないなあ、と思いつつ食べ始めるとこれが何とも美味い。テーブルにある唐辛子味噌(辣醤)をまぶすと更に美味い。チャーハン、辣醤、水とこの順番で食べ続け気が付くと皿は空、お腹は一杯。これで1マルクのチップを入れても10マルク(約500円)!安い。」

と詳しく書いてある。しかし、13年経てば無くなってもおかしくはないか。結局見付からず、駅で買い物をしてホテルで食べる事に。町中のマーケットは閉まっていても、少し高めだが駅は開いている。ビールとハム(Schinken 豚と牛の)、ポテトサラダなどを買い込む。その中でもFAXEというビール、アルコール度数が10%もある。それにフランクフルト名物のアップルワイン(Apfelwein)の瓶も買って、いそいそとホテルへ。先にも書いたが、こういう食事が大好き。地元の人が普段食べている物を食べると、色々な事が分かるからだ。例えば、ポテトサラダは日本のそれより甘く、酸っぱく出来ている。ピクルスが入っている事もある。こうした体験をする事で、ドイツ人の味覚と我々の違いを理解出来る訳である。味覚は人生の大事であり、調理を通じて文化の一端も分かって来る。などと理屈を捏ねなくとも、ドイツでこれを食べれば旨い。しかし、日本に持って帰ると...。牛のハムは珍しいので、試したがいける。アップルワイン(Ebbelweiとも)は前にも飲んだが、甘い訳ではなく僅かに発砲していて、日本で言えばサワーが近いだろう。件の10%ビールだが、これは回った。普通のビールのつもりで飲むと吃驚する。一緒に買ったパンがいい感じで、柔らかくて旨かった。固いパンが当たり前のドイツで白い柔らかいパンが食べられる様になったとは意外だった。やはり、こうして食べて正解だった。何遍も来ているが、何か新しい発見は常にあるなあ。

 

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